2010-01-01から1年間の記事一覧

ジェフ・エドワーズ「原潜デルタⅢを撃沈せよ」上下 文春文庫

潜水艦が好き。海戦小説が好き。という理由で、この手の作品は即、購入する。はじめての作家かと思ったら、以前、同じ作家の「U307を雷撃せよ」を読んでいた。やはり潜水艦もので、なかなかよく書けていた。著者はアメリカ海軍で対潜戦特技官として勤務して…

伊藤計劃「虐殺器官」

もう十数年前のことである。当時の写真週刊誌に、ボスニア紛争の写真が掲載されていた。カメラが捉えていたのは虐殺で犠牲になった「人間の骨」だった。記事には「憎悪のあまり、殺すだけでは足りず、肉を骨から削いだ。」とあった。思わず背筋が冷たくなっ…

内田 樹・釈 徹宗「現代霊性論」読了

「霊性」とはスピリチュアリティのこと。哲学者・内田樹と宗教学者・釈徹宗が神戸女学院大学院において対談形式で行った講義録である。内田先生独特のぶっちゃけ本音語りとユニークな論点。そこに釈先生の広く深い宗教全般への造詣が加わって、とても読みや…

難波功士「ヤンキー進化論  不良文化はなぜ強い」

いま、マーケティングの分野で「ヤンキー」が注目されているという。比較的早く結婚し、子だくさんで、親や家族を大切にする。地域の行事やコミュニティにも積極的に参加する…。ほんとうなの?と思う。現状や社会に対して不満を持って、つっぱっていた不良世…

雑誌BICYCLE NAVI、MOTO NAVI 休刊から復刊へ。

自動車雑誌NAVIの休刊とともに休刊の決まっていたBICYCLE NAVIとMOTO NAVIが復刊へ。 http://www.bicycle-navi.net/blog/2423.html 雑誌の休刊・廃刊が続いている状況で、ちょっとうれしい話。出版社である二玄社から独立する形で存続するらしい。自転車ライ…

隈研吾+三浦展「三低主義」読了

「負ける建築」の建築家、隈研吾と「下流社会」「シンプル族の反乱」を書いた三浦展の対談。「三低主義」とは、女性が結婚相手を選ぶ歳の「三高主義:高学歴・高所得・高身長」に代わる新しい男性の理想像「低リスク」「低依存」「低姿勢」のことらしい。目…

高村 薫「太陽を曳く馬」ようやく読了

最強の難攻不落小説、やっとやっと読破。2009年8月に購入したので半年以上かかったことになる。村上春樹「1Q84」を読み終えた直後、同じようにオウム真理教を題材にしたと思われる本書と篠田節子の「仮想儀礼」を購入。3作とも上下2巻という大作だ。こ…

篠山ABCマラソン完走

3月7日(日曜日)第30回篠山ABCマラソンを走った。フルは3回目。篠山は去年に続いて、2回目。ハーフも含めると7レース目だが、初めての雨になった。 会場まで 朝4時50分起床。雨。気温は6℃。朝食を食べて6時15分に出発する。予定より遅れめ。高…

ローレン・アイズリー「星投げびと--コスタベルの浜辺から」

たしか東京駅前の八重洲ブックセンターだったと思う。仕事を終え、大阪に帰る新幹線の出発までの時間を、本のタイトルを眺めながら過ごそうとしていた。目に飛び込んできたのがこのタイトル。「星投げびと」すぐ手に取って、ぱらぱらと中身を見て、そのまま…

久坂部 羊「廃用身」

海堂 尊の「チームバチスタの栄光」で味をしめ、医療ミステリーを探していてこの本に遭遇。グッチ先生と白鳥のおなじみコンビが活躍するノリの良いミステリーを期待していたのが、いきなり冷水を浴びせられたような問題作だった。ミステリーですらなかった。…

ウィリアム・ホープ・ホジスンの本

昔、東宝の映画で「マタンゴ」という作品があった。小学生のころ、近所の映画館で確か怪獣映画と2本立てで観たのだが、これが大人向けのホラー映画で死ぬほどこわかった。豪華ヨットで航海に出た男女7人が嵐に遭って難破する。たどり着いた無人島は、カビ…

司馬遼太郎のマイベスト作品

司馬遼太郎の作品でマイベストは何だろう。最近、人に聞かれると「坂の上の雲」と答えることが多かったが、本当にそうだろうかと最近思うようになった。他に好きなのは、大村益次郎を描いた「花神」高田屋嘉兵衛を描いた「菜の花の沖」幕末の医師松本良順を…

雑誌“NAVI”休刊

本日、最後の「NAVI」を購入。25年目だという。10代から愛読していたCAR GRAPHICの二玄社から発刊され、創刊号から愛読していた雑誌である。自動車雑誌というより自動車をキーに様々なテーマを語る「自動車文化雑誌」とでもいうのか、「クルマを見れば、…

隈研吾+三浦展「三低主義」

「シンプル族の反乱」の著者である三浦展と建築家 隈研吾の対談。目次をさっと見て、「進歩の終わりの時代」という言葉が目に飛び込んできて購入。個人的に、「進歩」「効率化」「成長」という言葉に代わるキーワードを求めているのである。

アラン・ワイズマン「人類が消えた世界」

ある日、突然人類が地球上から姿を消したら世界はどうなっていくだろう。例えばニューヨーク、マンハッタンでは、莫大な地下水を汲み出す排水機能が止まり、地下鉄は水没する。数年後、水道、ガス管などが破裂し、あちこちの道路に亀裂ができて、そこから植…

小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」

理数系の頭を持っていない自分には、数学やチェスのようなゲームの世界に強い憧れがある。「フェルマーの最終定理」や「ポアンカレ予想」に取り組んだ数学者たちのドキュメンタリーを読んだりするのが好きなのは、そんな理由からだと思う。 「博士の愛した数…

スタニスワフ・レム「砂漠の惑星」ハヤカワSF文庫

同じ本を2度読むことはほとんどないが、本書は、その例外とも言える1冊。高校か大学の頃、初めて読み、その後2度は読んでいる。数年前に、もう一度読みたいと思って本棚を探したが見つからず、絶版になっていて書店にもなく、ネットで古書を探してようや…

飛 浩隆「グラン・ヴァカンス--廃園の天使<1>」ハヤカワ文庫JA

かっこいいSFが読みたかったら、これしかない。 SFだが、その魅力はSFというジャンルを遙かに凌駕している。流麗でスタイリッシュ、審美的ともいえる文章。トリッキーで意表を突くストーリー。舞台は、仮想リゾート“数値海岸”の中の「夏の区界」。ゲス…

茂木健一郎「すべては音楽から生まれる」PHP新書

茂木建一郎という人は、いろいろ言われている人だが、個人的にはファンである。2009年の前半ぐらいまで、出版される本はほとんど読んでいた。学習や創造に関する脳科学の話は、目からウロコの部分や頷ける部分も多かったし、感動したことも少なくない。しか…

高村薫「太陽を曳く馬」

2009年7月に購入して以来、いまだに読了できずにいる難攻不落小説。村上春樹の「1Q84」とセットで読むつもりで買ったのだが、文体との相性が悪いのか、なかなか読み進めないでいる。なぜ「1Q84」とセットかというと、どちらも新興宗教を題材としてお…

谷川健一「古代学への招待」

「青銅の神の足跡」「白鳥伝説」など、目からウロコ体験満載の名著の著者による古代学入門。目次を見て購入。 「邪馬台国と物部王国」 「金属と白鳥」 「山部の物語」 「古代巫女王の系譜」 しかし、この手の本って、時間に余裕のある時でないと、なかなか読…

須賀敦子の本

数年前に初めて出会った作家。どうしてもっと早く読まなかったのだろう。須賀敦子「トリエステの坂道」「コルシア書店の仲間たち」「ヴェネツィアへの旅」「遠い朝の本たち」タイトルからの印象は紀行文かイタリア生活のエッセイ風だが、中身はまったく違う…

「1Q84」の読み方

「1Q84」の読み方 この小説で自分がいちばん注目しているのは「悪」の描き方だ。「悪」はどこからどうやって生まれてくるのか、それは、この小説の最も重要なテーマのひとつだと思っている。1995年、地下鉄サリン事件が起きた。村上春樹は、1997年、その被…

河内 厚郎 /淀川ガイドブック編集委員会「淀川ものがたり」

海の近くで育ったせいか、住まいの近くに「水」がないと落ち着かない。社会人になってからの住まいは、ほとんど「川」の近くで選んできた。3年の東京勤務を終え、関西に戻ってきた時、いちばん懐かしく思ったのは「淀川」の存在。電車で大阪市内に向かう時…

前島 賢「セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史」

「セカイ系」そんな言葉があるとは知らなかった。ただ「セカイ系」の代表とされる作品に新海 誠のアニメ「ほしのこえ」高橋しんのコミック「最終兵器彼女」にはハマッたことがある。本書の中にセカイ系の定義らしきことが書かれている。「作品の中に世界はあ…

クリス・アンダーソン「フリー」

「無料」がキーワードであるらしい。著者は「ワイヤード」編集長。少し前に「ロングテール」という言葉を発信した人。無料の人気サービスが有料になった途端、利用者が離れてしまい、広告も売れなくなった…みたいな話は無数にある。無料/有料の壁を 多くの…

飴村 行「粘膜人間」

少し前から書店の店頭で目についていた作品。第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。隣に並んでいた同じ著者の「粘膜蜥蜴」のほうにまず目が行ったが、デビュー作の本書を読んだ。身長195cm、体重105kgの小学生。河童、憲兵隊…。そんな異常な設定が何の説明…

吉岡 平「火星の土方歳三」

数年前、書店でタイトルを見て思わず吹き出してしまった。中年世代でE.R.バロウズの火星シリーズにハマッたSFファンなら、ニヤリとするはずだ。南北戦争のさなか、インディアンに追われた南軍兵士のジョン・カーターは逃げ込んだ洞窟で火星に瞬間移動す…

松田久一『「嫌消費」世代の研究』

「消費しない」若者が増えているという指摘は数年前からあった、若者の「クルマ離れ」「ブランド離れ」「モノ離れ」はじわじわと拡がりつつある印象だった。最近、この「消費しない消費者」を題材にした本がポツポツと出てきた。本書は「嫌消費」世代という…

伊藤 礼「こぐこぐ自転車」

新刊の「ぎこぎこ自転車」を買いに行って、隣に並んでいた「本書」も購入。2冊同時に読み始め、本書を先に読了。定年(67歳?)の少し前に自転車に目覚め、数年の間に6台の自転車を所有。定年後の暇に任せて近場サイクリングから全国各地のツーリングまで自…