2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

隈研吾+三浦展「三低主義」

「シンプル族の反乱」の著者である三浦展と建築家 隈研吾の対談。目次をさっと見て、「進歩の終わりの時代」という言葉が目に飛び込んできて購入。個人的に、「進歩」「効率化」「成長」という言葉に代わるキーワードを求めているのである。

アラン・ワイズマン「人類が消えた世界」

ある日、突然人類が地球上から姿を消したら世界はどうなっていくだろう。例えばニューヨーク、マンハッタンでは、莫大な地下水を汲み出す排水機能が止まり、地下鉄は水没する。数年後、水道、ガス管などが破裂し、あちこちの道路に亀裂ができて、そこから植…

小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」

理数系の頭を持っていない自分には、数学やチェスのようなゲームの世界に強い憧れがある。「フェルマーの最終定理」や「ポアンカレ予想」に取り組んだ数学者たちのドキュメンタリーを読んだりするのが好きなのは、そんな理由からだと思う。 「博士の愛した数…

スタニスワフ・レム「砂漠の惑星」ハヤカワSF文庫

同じ本を2度読むことはほとんどないが、本書は、その例外とも言える1冊。高校か大学の頃、初めて読み、その後2度は読んでいる。数年前に、もう一度読みたいと思って本棚を探したが見つからず、絶版になっていて書店にもなく、ネットで古書を探してようや…

飛 浩隆「グラン・ヴァカンス--廃園の天使<1>」ハヤカワ文庫JA

かっこいいSFが読みたかったら、これしかない。 SFだが、その魅力はSFというジャンルを遙かに凌駕している。流麗でスタイリッシュ、審美的ともいえる文章。トリッキーで意表を突くストーリー。舞台は、仮想リゾート“数値海岸”の中の「夏の区界」。ゲス…

茂木健一郎「すべては音楽から生まれる」PHP新書

茂木建一郎という人は、いろいろ言われている人だが、個人的にはファンである。2009年の前半ぐらいまで、出版される本はほとんど読んでいた。学習や創造に関する脳科学の話は、目からウロコの部分や頷ける部分も多かったし、感動したことも少なくない。しか…

高村薫「太陽を曳く馬」

2009年7月に購入して以来、いまだに読了できずにいる難攻不落小説。村上春樹の「1Q84」とセットで読むつもりで買ったのだが、文体との相性が悪いのか、なかなか読み進めないでいる。なぜ「1Q84」とセットかというと、どちらも新興宗教を題材としてお…

谷川健一「古代学への招待」

「青銅の神の足跡」「白鳥伝説」など、目からウロコ体験満載の名著の著者による古代学入門。目次を見て購入。 「邪馬台国と物部王国」 「金属と白鳥」 「山部の物語」 「古代巫女王の系譜」 しかし、この手の本って、時間に余裕のある時でないと、なかなか読…

須賀敦子の本

数年前に初めて出会った作家。どうしてもっと早く読まなかったのだろう。須賀敦子「トリエステの坂道」「コルシア書店の仲間たち」「ヴェネツィアへの旅」「遠い朝の本たち」タイトルからの印象は紀行文かイタリア生活のエッセイ風だが、中身はまったく違う…

「1Q84」の読み方

「1Q84」の読み方 この小説で自分がいちばん注目しているのは「悪」の描き方だ。「悪」はどこからどうやって生まれてくるのか、それは、この小説の最も重要なテーマのひとつだと思っている。1995年、地下鉄サリン事件が起きた。村上春樹は、1997年、その被…

河内 厚郎 /淀川ガイドブック編集委員会「淀川ものがたり」

海の近くで育ったせいか、住まいの近くに「水」がないと落ち着かない。社会人になってからの住まいは、ほとんど「川」の近くで選んできた。3年の東京勤務を終え、関西に戻ってきた時、いちばん懐かしく思ったのは「淀川」の存在。電車で大阪市内に向かう時…

前島 賢「セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史」

「セカイ系」そんな言葉があるとは知らなかった。ただ「セカイ系」の代表とされる作品に新海 誠のアニメ「ほしのこえ」高橋しんのコミック「最終兵器彼女」にはハマッたことがある。本書の中にセカイ系の定義らしきことが書かれている。「作品の中に世界はあ…

クリス・アンダーソン「フリー」

「無料」がキーワードであるらしい。著者は「ワイヤード」編集長。少し前に「ロングテール」という言葉を発信した人。無料の人気サービスが有料になった途端、利用者が離れてしまい、広告も売れなくなった…みたいな話は無数にある。無料/有料の壁を 多くの…

飴村 行「粘膜人間」

少し前から書店の店頭で目についていた作品。第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。隣に並んでいた同じ著者の「粘膜蜥蜴」のほうにまず目が行ったが、デビュー作の本書を読んだ。身長195cm、体重105kgの小学生。河童、憲兵隊…。そんな異常な設定が何の説明…

吉岡 平「火星の土方歳三」

数年前、書店でタイトルを見て思わず吹き出してしまった。中年世代でE.R.バロウズの火星シリーズにハマッたSFファンなら、ニヤリとするはずだ。南北戦争のさなか、インディアンに追われた南軍兵士のジョン・カーターは逃げ込んだ洞窟で火星に瞬間移動す…

松田久一『「嫌消費」世代の研究』

「消費しない」若者が増えているという指摘は数年前からあった、若者の「クルマ離れ」「ブランド離れ」「モノ離れ」はじわじわと拡がりつつある印象だった。最近、この「消費しない消費者」を題材にした本がポツポツと出てきた。本書は「嫌消費」世代という…

伊藤 礼「こぐこぐ自転車」

新刊の「ぎこぎこ自転車」を買いに行って、隣に並んでいた「本書」も購入。2冊同時に読み始め、本書を先に読了。定年(67歳?)の少し前に自転車に目覚め、数年の間に6台の自転車を所有。定年後の暇に任せて近場サイクリングから全国各地のツーリングまで自…

石川 雅之「純潔のマリア」1巻限定版 ぬいぐるみ付き (コミック)

アマゾンで注文していたことを忘れていて、届いてびっくり。ぬいぐるみ付きコミック。根っからの活字人間なので、コミックはほとんど読まないが、友人とかに勧められて読むこともたまにある。この作者は「もやしもん」という農大が舞台のコミックでファンに…

吉野裕子「山の神」

同じ著者の「蛇」という本を読んで強烈な印象が残っている。鏡餅はとぐろを巻いた蛇を表している。「カガミ」の「カガ」は蛇を表し、「鏡」とは「カガの目」つまり蛇の目から来ている等、目からウロコが何回も落ちた経験がある。本書は日本古来の神様は、そ…

木村秋則「リンゴがおしえてくれたこと」

「奇跡のリンゴ」に続いて、今度はご本人が書かれた本。農業の話なのだが、その根っこはもっと根元的な世界に触れている。作物の話、土の話、害虫の話…。語られるのエピソードのひとつひとつが自然の英知そのもの。これはひとつの文明論・宇宙論だと思う。現…

柳 広司「ダブル・ジョーカー」

ジョーカー・ゲームの続編。 自分はこっちのほうが面白かった。ストーリーや展開がこなれてきている。出張の帰りの新幹線で読了。スタイリッシュなスパイミステリーだ。物語は日米の開戦で終わるが、続編は出るのだろうか。誇り高きスパイたちがあの戦争をど…

内田 樹「邪悪なものの鎮め方」

タイトル買い。 内容に思い当たるところがあって購入。「邪悪なもの」とは何だろう。たぶん村上春樹の「1Q84」も論じられているだろう。と思って目次を見るとその通り。「1Q84」の重要なテーマのひとつが「悪」であると思っている。内田先生が「1Q…

NHKスペシャル「無縁社会」

1月31日放映のNHKスペシャル「無縁社会」を一週間遅れで見た。「無縁死」と呼ばれる身寄のない死者が年間3万2千人もいることがNHK独自の調査で判明。番組スタッフは、いま世の中にとても奇妙な、深刻な自体が起きているのではないか…という意識を持っ…

伊藤 礼「自転車ぎこぎこ」

朝日新聞の日曜版の書評欄で見つけた本。自分が始めた趣味に関して書かれた本を読むのは、とても楽しい。ランニングだけで三十冊以上は読んだと思う。中でも、ランニングの専門家ではない人が書いた本は面白いし、意外と使えるのである。村上春樹、甘粕りり…

内田和成「異業種競争戦略」

業界というものがある。家電業界、銀行業界、旅行業界…。どの業界でも競争相手は同業他社であった。SONYのライバルは、パナソニック、トヨタのライバルは日産、JTBのライバルは近畿ツーリスト、三越のライバルは伊勢丹…。しかし、最近、そのルールが通用…

石川拓治「奇跡のリンゴ」幻冬舎

知人から熱狂的に薦められていた本だが、なかなか手が出ず、ようやく購入。手が出なかった理由は「すべては宇宙の采配」とか、かなりスピリチュアルな世界に踏み込んだ本のように感じられたこと。実際「すべては〜」は宇宙人に遭った話でもあるらしい。読も…

柳 広司「ジョーカー・ゲーム」

ちょっと薄味のスパイ・ミステリー。 妻が面白そうに読んでいたので、読む気になった。時代は、戦前。日本が太平洋戦争に向かって突っ走り始めた頃、陸軍にD機関と呼ばれたスパイ養成機関があった。スパイ小説といえば、罠、裏切り、尋問、拷問など、陰惨な…