隈研吾+三浦展「三低主義」読了

「負ける建築」の建築家、隈研吾と「下流社会」「シンプル族の反乱」を書いた三浦展の対談。「三低主義」とは、女性が結婚相手を選ぶ歳の「三高主義:高学歴・高所得・高身長」に代わる新しい男性の理想像「低リスク」「低依存」「低姿勢」のことらしい。目次を見て「進歩の終わりの時代」という言葉が目に飛び込んできて購入した。しばらく前から個人的に「進歩」「効率化」「成長」に代わるキーワードを求めていたのである。対談は、いろんなヒントに満ちている。
本書の中で自分がいちばん注目したのは「住宅の私有化」という国家の政策が、日本の都市や地方を駄目にしたということだ。自分の実家も公営の借家であり、家を所有するという発想は、ずっと無かった。結婚し、家庭を持ってしばらくして、妻から「家が欲しい」と言われて初めて「家」を所有するという発想が出てきた。以来、分譲マンションを2度購入している。いまも、そのローンを払い続けている。この先、自分には、新しい家を所有する経済力はもう残されていない。この本を読むと、「マイホームの夢」は国家が作り上げた「幻想」だったとわかる。「借りる住宅」「リノベーション」が、これからの住宅や都市のあるべき形だという二人の主張には頷ける。自分は、この先「マイホーム主義」を捨てて「三低」の生き方ができるだろうか?