木村秋則「リンゴがおしえてくれたこと」

「奇跡のリンゴ」に続いて、今度はご本人が書かれた本。農業の話なのだが、その根っこはもっと根元的な世界に触れている。作物の話、土の話、害虫の話…。語られるのエピソードのひとつひとつが自然の英知そのもの。これはひとつの文明論・宇宙論だと思う。現在の文明を支配している法則-----効率の重視、グローバル化、規模の果てしない拡大…。それがとんでもない間違いであることを、この人は全身全霊で警告している。社会全体が間違った方向に向かっていることにたった一人気づき、たった一人で抵抗する人がいる。この人は本当の天才だ。「ハチはなぜ大量死したか」の中に出てくる、昔ながらの自然な養蜂をめざそうとする養蜂家カーク・ウエブスターの生き方にも通じるところがある。ロシアミツバチによる、効率は悪いが自然本来の養蜂を行おうとするウエブスターは、収入の大幅な減少による貧困に耐えながら、養蜂の世界を変えようとする。
世界のあちこちで同じような動きが始まっている、と感じる。