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茂木健一郎「すべては音楽から生まれる」PHP新書

茂木建一郎という人は、いろいろ言われている人だが、個人的にはファンである。2009年の前半ぐらいまで、出版される本はほとんど読んでいた。学習や創造に関する脳科学の話は、目からウロコの部分や頷ける部分も多かったし、感動したことも少なくない。しかし2009年の前半から出版される本の数が異常に増えてきたため、購入が追いつかなくなった。

多くの著作の中で本書は「一番好きな本」のひとつ。

著者は、クオリアという芸術に関わりの深い概念を研究し、自らも音楽をはじめ、様々な芸術に実際に触れ、芸術家たちとも会っている。その彼が音楽を語った本だ。ある意味で、とても過激な本だと思う。タイトルの「すべては音楽から生まれる」ということを文字通り主張している。

人間の意識は「脳の1千億の神経細胞が創り出すシンフォニー」であり、音楽体験とは、脳の中のシンフォニーと現実の音楽が共鳴しあうのが、音楽体験であるという。この本で自分がクラシック音楽を聴けるようになるかどうかは別として、とても良い本だった。クラシック音楽の聴き方というよりクラシック音楽のある生の豊かさについて書かれている。憶えておきたい言葉がいっぱい出てくる。ほんの一部を紹介する。
ほんとうは前後の文脈も含めて引用しないと、この文章の凄さはわかってもらえいないと思うが、あえて短く紹介しておく。
『私にとって「耳をすます」ことと新しいことを「発想する」ことは同義語である。』
『端的にいって、頭のいい人とは、脳の中にいい音楽が流れている人だと思う。』
『さらに告白してしまうと、ここ数年、私は文章を書く時、意味の伝達に主眼を置いていない。』
過激で、飛躍した断定だが真実を言い当てていると思う。

本書を茂木建一郎の本のベスト1に推したいと思う。