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著者の本は初めて読んだが、内容は衝撃的としか言いようがない。自分には内容をきちんと紹介するだけの知識や見識がないが、できるだけ多くの人に読んでほしいと思う。沖縄、普天間基地の話から本書は始まる。普天間の基地を使用する米軍の航空機は、沖縄じゅうの空を自由に飛行できるという。住宅地であろうと人口密集地であろうと…。しかし、一箇所だけ米軍機が飛べない空域がある。それは基地内の米軍関係者の住宅地の上空である。その理由は、墜落した時に危ないからだという。沖縄の空を制限なく自由に飛行できる米軍機が、米国内での法律に従って、米軍関係者の住宅の上空だけ飛行禁止になっている。この事実を知って言葉を失った。しかし、話は、それだけにとどまらない。沖縄の空は嘉手納基地を中心に半径90km、高度6000メートルまでが米軍の管理空域になっているという。なぜ、こんな理不尽なことになっているのか?
鳩山政権が9カ月で崩壊した理由。
著者は、ここで2009年9月に成立し、わずか9カ月しか続かなかった鳩山政権の崩壊の事情を紹介する。鳩山政権は、普天間基地の県外/国外への移設問題に手をつけ、あっけなく崩壊してしまう。鳩山首相に反旗を翻したのは、当時の外務官僚や防衛官僚だった。彼ら官僚たちは、首相以外の誰に忠誠を誓っていたのだろう。その答を探り当てようとしたのが本書である。具体的には「日米合同委員会」という名の組織なのだが、それがどのような経緯で生まれたかを、本書は、第二次世界大戦の終戦時の事情に遡って解き明かしていく。ポツダム宣言の受諾、GHQの占領政策、天皇の人間宣言、日本国憲法の成立、東京裁判、さらに国連の設立、共産主義革命の進行など、当時の様々な出来事が複雑にからみ合って、現在につながる体制が出来上がった経緯を解き明かしていく。その課程は、国際謀略小説を読んでいるような気になるが、これはフィクションではなく、紛うことのない事実なのだと知って、恐ろしくなる。この組織は、憲法すらも超えたパワーを持って、戦後の日本を作りあげてきたという。著者は、原子力村といわれる体制にも、同じ原理が働いているという。そうでなければ、あれほど大規模な被害を発生させながら、未だに誰も責任を問われず、罰されることもなく、さらに再稼働に向けて動き始めていることが説明できないという。
戦後史の裏側。
本書の後半は、現在の体制が成立した経緯を「昭和天皇と日本国憲法」「国連憲章と第二次世界大戦後の世界」「自発的隷属とその歴史的起源」という切り口で執拗に解き明かしていく。その中で何度も「目からウロコ」といえるような事実が暴露される。本書を読んで、自分が昭和史についてあまりに無知であったことを思い知らされた。例えば憲法の成立に東京裁判が影響を与えたこと、共産主義革命への恐怖から、日本の中枢部が進んで占領軍の駐留存続を希望したことなど、驚くべき事実に打ちのめされる。
僕たちが進むべき方向とは?
本書を読んで、様々な事実を知らされて、自分の無知を自覚したとする。さて、その先どうするか?僕たちはそこで途方にくれてしまう。著者によると現在の憲法をめぐる議論の不毛は、今までリベラル派が主張してきた「憲法に指一本触れてはいけない」という方向と「人権を後退させ、戦争を可能にする憲法改正」の方向しかなく、正しい方向に憲法を変えていこうと意見が存在しなかったことにあるという。著者は、憲法を盾にとって国内の米軍基地を撤退させることに成功したフィリピンの手法を学べばいいという。著者の意図は理解できるが、そう簡単ではないだろう。国民の支持を勝ち取った首相ですら失脚させてしまうような強大な勢力に対抗するのは容易なことではない。今の僕にできるのは、知り続ける努力をしていくこと。そして知った事実を様々な手段でシェアしていくことではないか、と思う。