司馬遼太郎「北斗の人」

司馬遼太郎「北斗の人」
大河ドラマの「龍馬伝」を見ていて、龍馬が入門する千葉道場に興味がわいた。そういえば司馬遼太郎の小説に千葉周作を主人公にした小説があったことを思い出して購入。それまでの伝統的な、木刀などによる組み太刀の稽古法に代わり、竹刀と防具による稽古法を推進。多くの剣法が持っていた神懸かり的な神秘性を排除し、合理的な剣術「北辰一刀流」を生み出した男の話だ。読んでみると、千葉周作司馬遼太郎が好んだ人物像-----旧来の伝統的な思想や風習に対して、医学、航海術、軍事など、近代の合理的な技術や思想で立ち向かう「技術者たち」-----の系譜である。つまり「胡蝶の夢」「花神」「菜の花の沖」などと同じ系譜の小説だと思った。しかし、それらの同じ系譜に属する他の作品に比べると、スケールが小さく感じられてしまうのなぜだろう。主人公の物語と時代の大きな「うねり」との関わりが描かれていないためだろうか。