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クリス・アンダーソン「MAKERSー21世紀の産業革命が始まる」

Kindleで読みたかった。
「FREE」「ロングテール」に続く第3弾。Kindle版で読みたかったが、肝心のKindleが1月配達なので、紙の本を買う。Webやデジタルの世界で起きている潮流が、今度は製造業を変えていこうとしている。その変化を描いた本だ。ワクワクしながら読み終えた。いまから十数年前に東大阪の工場街で、3Dプリンターの前身ともいえる紫外線硬化樹脂を使った3Dのモックアップ製造機械を見学したことがあって、これからはDTPではなくDTPR(Desk Top PRoduction)の時代が来るかもしれないと思ったことを思い出した。あれから十数年経った。僕たちがソーシャルネットワークスマートフォン、スマートタブレットにうつつを抜かしている間に世の中はここまで進んでしまった。またしても置いていかれたという絶望感。いや、まだ間に合うぞという希望。様々な思いにとらわれながら読み進んだ。
Webやデジタルの世界で起きたことが遂に製造業を変え始めている。
かつて巨大な国家プロジェクトだったコンピューターが安価な個人の道具になっていったように、巨大な企業しか所有できなかった、CNCの工作機械やCADシステム、3Dのスキャニングシステム等がどんどん低価格になり、個人が使えるようになった。また、オープンソースのコミュニティの拡大によって、膨大な開発費を必要としたプログラムを、無料で手にすることができるようになった。さらにCADで作られた製品のデザイン/設計はWebを通じて世界中でやりとりできるようになった。それによって個人がメイカー:製造者になれる。しかも製造者に必要なサプライチェーンをつなぐコミュニティやビジネスが定着しつつあり、それらを利用すれば、技術が無くても「メイカー」になれる。その上、このような小さな企業をバックアップするクラウドファンディングと呼ばれる投資の仕組みも急成長している。技術者であり発明家であった著者の祖父が特許を取得して製造しようとしたスプリンクラーの話に始まり、著者自身が始めたラジコンヘリを製造する3Dロボティクス社の話、顧客に近いところで自動車を製造するローカルモーターズの話など、様々な実例を上げながら、この大きな変化を読み解いていく文章は、前3作と同じ。「FREE」や「ロングテール」の概念も本書の中に何度も登場してくる。少し前に読んだ「SHARE」とも共通する部分がある。実際「SHARE」で取り上げられた「エッツィー」なども本書でも描かれている。
ビットから、アトムへ。
著者は、Webやデジタルの世界で起きたことは序章で、これから本当の革命が起きるのだという。ビットの世界で起きた革命が、アトムの世界でも始まるのだという。独りの市民が、ある製品を思いつき、自らデザインして、例えばKICK STARTERに登録する。その製品を製造するのに必要な数万ドルの投資を募るのだ。一定の期限までに目標の金額が集まると(申し込みのみ)クレジットカードが決済され、資金が集まり、提案した市民は、製品の製造にかかる。製品が完成すると投資者は、その製品を手に入れることができる…。製品化の段階でデザインや機能について「メイカー」と「投資者」は様々な情報をやりとりする。製品開発を公開で行いながら、同時にマーケティングや広告までも行ってしまうという手法。これはいままで企業が逆立ちしてもできなかった方法だ。「ペブル」というスマートウォッチは、完全にオープンソースの手法で、ソニー・エリクソンより数倍早く市場に投入された。著者は、このような潮流が、大企業のモノづくりさえ変えていく可能性があると語る。この潮流は企業を取り巻くビジネスの生態系をまったく違うものに変えてしまう可能性がある。それは僕らの業界では、破壊的な変化を引き起こすかもしれない。「MAKERS」しばらくは、目を離せない。