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NHKスペシャル「無縁社会」

1月31日放映のNHKスペシャル「無縁社会」を一週間遅れで見た。「無縁死」と呼ばれる身寄のない死者が年間3万2千人もいることがNHK独自の調査で判明。番組スタッフは、いま世の中にとても奇妙な、深刻な自体が起きているのではないか…という意識を持って、無縁死した人の足跡を取材していく。そこから浮かび上がってきたのは、冷え冷えとした救いのない現代社会の姿だ。
「無縁死」とはNHKによるネーミングだが、状況をよく表している。「地縁」「血縁」を失った人々は、さらに定年やリストラで「社縁」を失うと、社会との接点を一切失ってしまう。技術や経済の進歩は、人間を孤立させる方向に向かっていると認識しているが、現実がここまで来ているとは驚いた。

番組への反応も大きかったという。誰にとっても身につまされる問題なのだろう。自分にとっても他人ごとではないと感じた。失われた地縁や血縁の代わりに人をつなぐのは「ネットの縁」だという意見はあるが、どれだけ有効なのだろう。番組の中に唯一出てきたメディアは電話だった。それも死んだ弟の部屋の電話に残された姉からの留守番電話…。足もとから冷気がじわじわと上ってくるような、不安とやりきれなさを感じた。
番組を見て、しばらく経って「ちょっと待てよ」という思いが頭をもたげてきた。果たして無縁社会って、本当にやりきれない、つらい社会なのかな」制作者の狙い通りに反応してしまっているんじゃないかな、という疑問を持つようになってきた。自分も子供がいない夫婦ふたりだし、どちらかが死んだら、ひとり暮らしになる可能性はとても大きい。無縁死する可能性も少なくないと思う。しかし、そんなこと、とっくにわかっているし、覚悟ができているはずではなかったか?
その後「無縁社会」について、友人と話し合う機会があった。友人も番組を見て、「死ぬ時は一人で死ぬかもしれないな」と思ったという。「しかし、それが辛いことなの?」という疑問も感じた、という。番組の中で、気になったのが、元大手都市銀の営業で、定年を迎え、熟年離婚した男性と、生涯未婚の元看護士だった女性のレポートだ。老人ホームで暮らす男性の日常は孤独そのもののように見えた。また女性のほうも「向こうでは(死んだ後)ひとりでいたくない」と共同で埋葬されるお墓の会員になる。自分が彼女の年齢や境遇に立っているわけではないので断言はできないが、覚悟はできていると思っている。それは悲壮な覚悟ではなく、いわば諦観のようなものである、と思っている。