最後のクルマ選び その3

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散々迷った挙句、「最後のクルマ選び」の決め手となったのはディーラーの近さとは。そして決めたのは、エコカーでもEVでもハイブリッド車でもなく、ましてやディーゼル車ですらない、オーソドックスなガソリンエンジン車。VW ゴルフ バリアント。クルマ選びを始めた頃には思いもよらなかったゴールである。Y田さんをはじめ、いろいろとアドバイスをくださった方には感謝。納車から4ヶ月。走行距離はたったの1500kmちょっと。一番遠くまで走ったのが、今月、災害ボランティアのために向かった岡山県総社市。エントリーの最後に、4ヶ月間が過ぎた印象を記しておこう。

納車。

注文から約1ヶ月、納車の日がやってきた。徒歩5分の近所にディーラーがあるので、自宅ではなく、ディーラーに出向いて受け取ることにする。朝オープンしたばかりのショウルームを訪れると、担当のSさんが早速出てきて、商談ブースに案内される。支店長やサービスの担当者がやってきて挨拶を受ける。ほぼ終わっている手続きと説明が済むと、お祝いのシャンパン(ノンアルコール)の栓を抜いて乾杯。最近の納車は、こんなセレモニーがあるのだ。その後、用意された新車に乗り込んで説明を受ける。これが1時間近くかかった。デジタル化の進んだ現代の自動車は、操作も複雑で、1度聞いただけではとても覚えきれない。説明を受けなければエンジンを始動することすらできないだろう。一通りの説明を聞き、最低限の操作を覚えて、おそるおそるエンジンをかけ、アクセルを踏み込んでいく。ディーラーにいる全てのスタッフがずらりと並んで見送る中を、恐縮しながら出口へ向かう。緊張でウィンカーとワイパーを間違えた。ああ、恥ずかしい。いよいよゴルフ・バリアントとの日々が始まった。

ちょっと後悔。「意外に硬い乗り心地」。

市内を数キロ走って、家に戻る。その第一印象は「硬い」。「GTi」や「R」ではなく、一番大人しいグレードなので、乗り心地はもう少し柔らかいのかと思ったら、意外や「かなり硬め」。少し前にレンタカーで借りたマツダ・デミオを思い出した。段差や凹凸では、ズンと鋭く突き上げられ、けっこう尾てい骨にひびく。アルデオの、飛ばすと頼りないが、普段は、柔らかくフラットな乗り心地とは正反対だ。そのぶん足腰がしっかりしていて、速度を上げて行っても安心感はあるのだが…。5名の乗員と荷物をたっぷり積めば、もう少しフラットになるのかもしれないが、一人や二人の乗員では、どうしても硬く感じられるのかも。この「硬さ」には、少しがっかり。やはりしなやかな「猫足」を望むなら、プジョーを選ぶべきだったのかも。

ちょっと後悔その2。黄色でなく「金色」に見える。

納車から4ヶ月。その印象を記しておこう。まず色について。ゴルフ・バリアントは、デザインが地味なので、白やシルバーだとカローラ・ワゴンみたいに見えるので、この色(ターメリックイエロー)にしたのだが、少しだけ後悔している。初めて見た人は、「わあ、輝いてますね。金色、派手!」「これは目立つわ!ゴージャス!お金持ちい!」などとおっしゃる。「普段着感覚で乗れて、道具感覚で使いこなせるクルマ」を目指していたのに、これでは正反対。道具感がバリバリ出ている地味系カラーのスバル「XV」を見るたびに「こっちにしとけばよかった」という思いが浮かんでくる。この先、乗り慣れてくると「金色」でも道具感が出てくるのだろうか?

狭くなった室内。遠くなったパーキングチケット。

アルデオより幅は10cmほど広くなっているが、室内は、逆に狭くなったと感じる。広くなった10cmは、ボデイのみで、室内の広さは変わらないのだろう。そのぶんドアがぶ厚く重い。クラウン並みのキャビンスペースが売りだったアルデオは、室内の前後長も広く、後部座席のレッグスペースも明らかに広く、ゆったりしていた。全高も数センチ高いので、室内空間はとても開放的だった。乗り換えて幅が広くなったのに、室内空間は、狭く窮屈になったのが、なんだか損したような…。ゴルフに乗り換えて顕著なのが駐車場の入り口でのパーキングチケットの取りにくさ。侵入する際、発券機にギリギリまでクルマを近づけないと、チケットに手が届かないのだ。アルデオに比べ、幅が増えたのは、ボディのみで、窓の位置が発券機から数センチ遠くなっている。また着座位置も低くなったため、よけいに届かなくなったのだと思う。乗り換えた直後は、いつも利用するショッピングモールの駐車場の発券機に手が届かず、クルマをわざわざ降りて、チケットを取りにいくことが何度かあった。

ハードウエアに不満なし。何もかも重い。

エンジン、足回りなど、ハードウェアはとても良くできていて不満は無い。1.4リッターターボエンジンのパワーやレスポンスに不足は無いし、ソリッドなハンドリングや足回りも申し分ない。シートや内装の質感も高く、文句のつけようがない。アルデオから乗り換えて一番気になるのは「重さ」。何もかもが重たいのである。ドアの開閉、レバーやスイッチ類など、相応の力を入れないと動かない。中でも一番戸惑ったのはクラクション。例えば、前方の脇道からバックで出てこようとしているクルマを発見した時。アルデオの時は、ステアリング中央のホーンボタンを軽く叩く感じで、短く鳴らしていた。同じような状況で、ゴルフのホーンボタンを軽く叩いたが、うんともスンとも言わない。ホーンボタンは、しっかり力を込めて押さないと鳴らないのだ。ウィンカーレバーも、アルデオでは指1本で軽く触れる感覚で操作していたが、しっかり力を込めて動かさないといけない。家人を見ていると親指と人差し指でしっかりレバーを掴んで動かしている。「操作は、しっかり掴んで確実に動かすように」とクルマに叱られているような感じ。ドイツ人は、みんな力が強いのかしら。

未完成な運転支援。

質実剛健ではあるが、完成度の高いハードウェアに比べて、情報系、運転支援系の機能は、まだまだ中途半端に感じる。前を走る車に自動的追従するアダプティブ・クルーズ・コントロール機能やレーンキープ機能、交差点などでブレーキを踏み続けなくても停止状態を維持してくれるオートホールド機能。それらの機能は、ドライバーが自分で設定や解除を、しかも別々に行う必要があり、とても煩わしい。さらにステアリングやブレーキのアシストの仕方がドライバーの感覚と微妙にずれているのである。レーンキープが維持する左右の位置は、僕の運転よりもわずかに右に寄っていて、気持ち悪い。減速のタイミングも僕より遅いような気がする。「運転支援モード」にしておけば、クルマが最適なモードを選び、しかもドライバーの癖などを学習して、違和感のない統合的なアシストをしてくれる。そんな風になるまでは、まだまだ時間がかかるのではないか。このような運転支援の現状を見ていると、自動運転というのは、そう簡単に実現するものではないのだと思うようになってきた。

最悪のマニュアル。

納車の時に受けた説明では、とても全部を覚えきれない。そこで頼りにするのが「マニュアル」だ。ゴルフには分厚いマニュアルが付いている。クルマ全体のマニュアルとナビなど情報系のマニュアルだ。しかし、このマニュアルが最悪で、ほとんど使えない。目次で知りたい機能を調べ、目的のページを探すが、欲しい情報に辿りつけない。当該ページの文章を読むと、すぐに「◯◯ページを参照」となり、そのページにとんでも、また「◯◯ページを参照」と指示され、いつまで経っても欲しい情報にたどり着けない。まるでマニュアルの中をたらい回しにされているような感覚。ディーラーの担当者に苦情をいうと、「私たちも使いにくくて困っているんです」と開き直られる。多分ドイツ本国で作成されたマニュアル原本を各国語に翻訳しているだけなのだろう。そして、その原本も、世界各地で仕様が違っている製品の情報を網羅するために、参照だらけのマニュアルになっているのだろう。あまりに使いにくいので、クルマには、分厚いマニュアルではなく、薄いクイックガイトのみを積むようになった。VWは、このマニュアルを製作するために少なからぬコストを費やしていると思うが、出来上がったのがこの状態では、ユーザーをないがしろにしているとしか思えない。広告やカタログを作ってきた同業としては、許せない。その気になれば、もっとユーザー視点のわかりやすいマニュアルが作れるはずだ。早急の改善を望みたい。

結論

4ヶ月前に始まった「最後のクルマ選び」は、最初は、時代の潮流と老後のニーズにかなった「コンパクトなエコカー」を探すところから始まった。ところがディーラーで実車を見たり試乗したりしているうちに、どんどんブレて行って、結局、全然違うクルマを選んでしまった。どうしてそうなったのかというと、僕自身や家人のクルマに対する価値感が昔と対して変わっていないことではないか。口では、エコカーだ、コンパクトカーだ、道具車だと言ってても、無意識のうちに、高級や高性能に魅かれてしまっていたのではないか。それがVW(大衆車の)ゴルフ(コンパクトカーの定番の)バリアント(ステーションワゴンの)というねじれまくった結論になったような気がする。どう見ても金色にしか見えないメタリックの黄色を選んだのも無意識の高級志向だったのかも。