中沢明子・古市憲寿「遠足型消費の時代  なぜ妻はコストコに行きたがるのか」

デフレや不況でモノが売れなくなっている、というのは「お父さん」の世界の話。お父さんではない「女こども」の市場では、次々にヒットが生まれている。モノが売れないというのは、売る側の怠慢だ、という主張。例としてあげられているのが、IKEAコストコH&MDEAN&DELUCA(ディーン&デルーカ)のトートバッグ、シリコンスチーマーのルクエなど…。それほど高価でもなく、かといって激安でもない、しかも必要でもないものが売れている。また、妻たちにとって今一番行きたい場所がコストコやイケアになっている。その理由は何か。キーワードは「キラキラ感」であるという。かつてのバブル時代の消費スタイルを「海外旅行型消費」だとすると、現在は「遠足型消費」である。それは、普段の生活の中で、ちょっとした非日常感を楽しめる消費のスタイルであるという。そう考えると、普段の生活の中に「売れる商品」のヒントはいっぱいある、と。確かに多くのビジネスは「女こども」の感覚をおろそかにしてきたという指摘は正しい。ここに今後のビジネスのヒントがたくさん隠されている、と思う。しかし、著者は、そのロジックをすべてのビジネスに当てはめようとする。「モノが売れない時代」だというのは「お父さんたちの思い込み」に過ぎない、と切り捨てる。かつて「モノが売れない時代」と言われた時代が何度もあったが、そんな時代でも多くのヒット商品が生まれてきたという。要は「お父さんたち」の努力が足りないのだ、と言い切る。この辺りのロジックの展開は、かなり乱暴に思える。実際に、自動車は売れていないし、百貨店の売上は連続で落ち続け、ららぽーとの出店により、地域の商店街はシャッター通りと化している。倒産する企業、失業するビジネスマンは増え続けているのである。これらの事実を見ずに、「勝ち組」だけに焦点をあてた消費論のようにも思える。