サイエンス

小松左京「虚無回廊1・2・3」

小松左京の最後の長編ともいえる作品。宇宙と人類の未来をテーマにした名作「果てしなき流れの果てに」「神への長い道」「ゴルディアスの結び目」等の系譜につながる壮大なテーマ作品だ。最初に刊行された時に「1」は読んだと思う。再読してみて、ストーリ…

池澤夏樹「春を恨んだりしないーー震災をめぐって考えたこと」

120頁ほどの薄い本。小説家が震災や原発について書いた本が読みたいと思った。報道の言葉ではなく、ジャーナリストの言葉でもなく、小説家の言葉で、今度の震災を語って欲しかった。被災地の光景や空気、匂い、音、人々を描写してほしかった。著者は詩人で、…

岩崎純一「私には女性の排卵が見える 共感覚者の不思議な世界」

「共感覚」には昔から興味があった。音に色を感じたり、文字や数字に色を感じたり、という不思議な能力。著者は、共感覚のひとつとして、女性の生理の周期である月経や排卵が見えたり聞こえたりするという。しかも、それは美しい色や音や触感として体験する…

相愛大学シンポジウム 中沢新一・内田樹・釈徹宗「人文科学の挑戦」

相愛大学の人文学部「仏教文化学科・文化交流学科」の開設記念シンポジウム。内田先生のtwitterで知り、妻とふたり分申し込んで、自分だけ当選。600名のところを1600名応募があったらしい。お目当てのメインはナマ内田先生だが、釈轍宗氏にも興味があ…

福岡伸一 対談集「エッジエフェクト」

新しい重要な変化は常に周縁(エッジ)で生まれてくる。真ん中ばかりを見ていると次の潮流が見えない。周縁は境界であり、別の世界と触れ合っていて、常に何かが生まれている。「エッジエフェクト」とは化学などで使われる「界面作用」のこと。生物学者であ…

福岡伸一「ルリボシカミキリの青」

福岡先生の本は5冊目。 「生物と無生物のあいだ」以来、読み続けている。実は私は理数系の本が大好きなのである。小学校以来、数学はからきし駄目だったのだが、サイエンスに対する憧れだけは人一倍強かった。小学校の高学年からSFを読むようになったのも、…

内田樹「邪悪なものの鎮め方」

2月のエントリーに本書の購入エントリーがある。ちらっと「1Q84」について書かれた章を読んで、ちょっと遠ざかっていた。同じ著者と釈徹宗との対談「現代霊性論」を先に読み、さらに他の本にいろいろと浮気している内に家人に先に読まれてしまい、なかなか…

クリストファー・マクドゥーガル「BORN TO RUN 走るために生まれた」

スゴい本だ。書店で見つけた時に気になっていたが、まさかこれほどの本とは。間違いなく今年の「マイ・ベスト3」に入りそうな本。著者は、自らがエクストリーム・スポーツも手がけるアスリートでもあるジャーナリストだ。しかしランニングだけは、多くの故…

ローレン・アイズリー「星投げびと--コスタベルの浜辺から」

たしか東京駅前の八重洲ブックセンターだったと思う。仕事を終え、大阪に帰る新幹線の出発までの時間を、本のタイトルを眺めながら過ごそうとしていた。目に飛び込んできたのがこのタイトル。「星投げびと」すぐ手に取って、ぱらぱらと中身を見て、そのまま…

アラン・ワイズマン「人類が消えた世界」

ある日、突然人類が地球上から姿を消したら世界はどうなっていくだろう。例えばニューヨーク、マンハッタンでは、莫大な地下水を汲み出す排水機能が止まり、地下鉄は水没する。数年後、水道、ガス管などが破裂し、あちこちの道路に亀裂ができて、そこから植…

スタニスワフ・レム「砂漠の惑星」ハヤカワSF文庫

同じ本を2度読むことはほとんどないが、本書は、その例外とも言える1冊。高校か大学の頃、初めて読み、その後2度は読んでいる。数年前に、もう一度読みたいと思って本棚を探したが見つからず、絶版になっていて書店にもなく、ネットで古書を探してようや…

茂木健一郎「すべては音楽から生まれる」PHP新書

茂木建一郎という人は、いろいろ言われている人だが、個人的にはファンである。2009年の前半ぐらいまで、出版される本はほとんど読んでいた。学習や創造に関する脳科学の話は、目からウロコの部分や頷ける部分も多かったし、感動したことも少なくない。しか…

「1Q84」の読み方

「1Q84」の読み方 この小説で自分がいちばん注目しているのは「悪」の描き方だ。「悪」はどこからどうやって生まれてくるのか、それは、この小説の最も重要なテーマのひとつだと思っている。1995年、地下鉄サリン事件が起きた。村上春樹は、1997年、その被…

フランク・シェッツィング「深海のYrr」ハヤカワ文庫

過去3年に読んだSFの中では間違いなくベスト1。いわゆるSFというより、マイクル・クライトン的なハイテク・スリラーに近い。ノルウエイの海底でゴカイに似た生物がメタンハイドレートの層を掘り崩していることが発見される。このまま掘り進むと大陸棚…

ライアル・ワトソン「エレファントム」

2008年6月に亡くなったワトソン博士の最後から2番目の作品。 ワトソン作品には80年代「未知の贈り物」で初めて出会い、「生命潮流」で人生観が変わるほどの衝撃を受けた。「風の博物誌」や「生命潮流」など、現代の博物誌的な視点と、超常現象など、危うい…

ライアル・ワトソン「思考する豚」 

昨年亡くなったワトソン博士の、いよいよ最後の著作。 知ってるようで知らない豚の生態。その知能は類人猿に 匹敵するという。古今東西のエピソードを紹介しながら、 語られる人類の隣人「豚」の話はとても面白い。ねつ造などで批判の多かった人だが、晩年は…

藤崎慎吾「鯨の王」

大好きな海洋SFで久しぶりの作品。ベルヌ「海底2万マイル」 クラーク「海底牧場」など、作品はあまり多くない。 最近ではドイツのフランク・シェッツィング著 「深海のYrr」が久々のヒット。そのスケール、環境問題を 含む最新の海洋・深海事情、魅力的な…