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大阪マラソン2016完走記

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とうとう「マラソンおやじ」になった。

16回目のフル挑戦になる今回の大阪マラソン。僕はとうとう「マラソンおやじ」になった。「マラソンおやじ」とは、僕が勝手につけた名前で、家族や友人の応援もなく、独りで黙々と走り続ける中高年マラソンランナーのこと。どこの市民マラソンでも見かける彼らのことを、僕は密かにこう呼ぶようになっていた。数年前、どこかの市民マラソンの帰りの電車の中で、こんな会話を耳にした。「奥さんとか来てはったん?」「まさか。女房が応援に来たのは最初の2〜3回。最初は、家族がマラソンに出るのは一大イベントやし、珍しかったんで、女房も家族も応援に来てくれた。そんなもん2〜3回で飽きるわ。『人も多いし、移動も大変やし、長いこと待って、見れるのは一瞬やし、つまらん』言うて来んようになったわ。」この会話を聞いて、僕は、近いうちに、自分もきっとこうなると思った。

けっこうなシリアスランナーだったりする。

彼ら「マラソンおやじ」の会話を聞いていると、ランナーとしてのレベルはけっこう高い。「サブ4」は当たり前。「サブ3.5」や「サブ3」を狙っている猛者もいる。さすがに頭のほうは後退していたり、頭頂部が薄かったりするが、体型はしっかり走り込んでいる証拠であるアスリート型で、その辺のお腹の出た中高年とは隔絶している。僕がいつも練習で走っている武庫川の河川敷コースでも「マラソンおやじ」をけっこう見かける。「太腿とふくらはぎにしっかり筋肉がついて足首がきゅっと締まっている」のが特長だ。 「マラソンおやじ」は、1キロ5分を切るペースで軽々と僕を置き去りにしていく。

2〜3年前から妻は応援に来なくなった。

上に書いたのとほとんど同じ理由で、妻がマラソンに来なくなった。最初は篠山マラソン。コースの大半が、田畑や里山のようなところを走るため、応援スポットが少なく、篠山の街自体も小さいので時間を潰す場所が少ないのだ。3月上旬開催で、山間の盆地は気候が寒いのも嫌がる理由のひとつだ。未明にクルマで出発し、到着まで1時間近くを要する遠さも辛かったらしい。大阪マラソン神戸マラソンも最初は応援に来てくれたが、2回目、3回目は会社の同僚とチームで走り、4回目は東京から参加した友人と走ったため、完走後の打ち上げ会などもあり、妻は来なかった。そして会社を退職してからは、一緒に走る仲間もなく、ずっと独りで練習を続けてきた。マラソンは、独りで練習し、独りで参加できるスポーツであるところが自分に合っていると思っている。しかし大会に参加するたびに、チームや仲間どうしで参加するランナーたちを見て、羨ましいと思うようになった。しかしどこかのランニングクラブに入るのも煩わしいという気持ちも強い。というわけで今回は、「誰も応援に来ない、淋しいマラソン」になった。

10月30日。前日受付とマラソンEXPO。

 朝食を済ませ、洗濯などをして、9時頃から走り始める。2kmほどごくゆっくり走った後、時間をかけてストレッチングを行う。その後は、ウィンドスプリントなどを交えながら身体を伸ばすような大きな走りで2km。最後の1kmは身体をほぐしながらゆっくりジョギング。家に帰ってシャワーを浴び、着替えて女房の買い物に付き合う。ショッピンセンターで昼食とショッピングを済ませ家に帰ってきたのが15時前。15時過ぎに自宅を出て南港のマラソンエキスポ会場をめざす。大阪駅から地下鉄御堂筋線に乗り換え、本町で中央線に、コスモスクエア駅ニュートラムに乗り換え、中ふ頭駅で降りる。受付はスマホに表示したQRコードを読みとるだけ。ゼッケンやTシャツなどを受け取り、エキスポ会場へ向かう。というより強制的にエキスポ会場を一巡するルートを歩かされる。初回からするとエキスポ会場のブースの数がずいぶん増えたように思う。ブースを一通り見て回り、グリコのブースで明日のレース中に補給するサプリメント3本500円を購入。出口近くでノンアルコールビールをもらって、旨いものコーナーを素通りして帰宅。家に帰ったのが18時30分。テレビを見ながら夕食。食後、お風呂に入った後、ようやく明日の準備を始める。就寝は10時半。

10月31日当日。

4時30分起床。パンとコーヒーの朝食を済ませ、ランニングウエアに着替え、その上にウォームジャケットを羽織り、ジョガーパンツを履いて、家を出る。気温は12度でけっこう寒い。6時10分宝塚発大阪行きの快速電車に乗る。一昨年とまったく一緒だ。参加ランナーを示すICチップをシューズに装着したランナーがちらほら見える。尼崎で東西線に乗り換える。駅ごとにランナーたちが乗り込んでくる。7時少し前に京橋駅到着。ホームのトイレが空いていたので、すばやく入る。改札を出て、OBPに向かう通路を進む。7時10分更衣ゾーン(芝生)に入って着替える。といってもウォームジャケットとジョガーパンツを脱ぐだけ。ウエストバッグなど装備を確認して、荷物をまとめ、荷物預りのトラックに向かう。装備を記しておこう。シューズは、大会の3週間前に買ったアディダスのAddizeroのJapan Boost。Addizeroは僕の足と相性がいいようで、ここ3年ほどは、このシューズで走っている。ボトムはCWXのメッシュ下着にNikeのグレーの膝丈パンツ。トップは前日にミズノのショップで購入した青白柄の透湿速乾Tシャツ。帽子は、ここ数年使っている黒のバイザー。アシックスのウエストポーチにはiPhone、ポケットティッシュ2個、グリコのジェルサプリ3本、塩飴5個、千円札3枚+小銭500円とバンドエイド2枚。左手にGARMINGPSウォッチと右手にiPhoneとの接続を切ったApple watch。(つないでいるとバッテリーが消耗して42.195km持たない)晴れてはいるが陽が陰ると寒いので、ビニールポンチョを被っていくことにする。7時45分に荷物を預け、スタート地点に向かう。途中で空いているトイレを見つけたので、「ラッキー!」と利用する。8時過ぎにスタート地点に集合。今年はHブロックなので、今までで一番後からのスタートになる。気温はあまり上がらず、半袖ランナーの腕に鳥肌が立っている。寒さに耐えながら、スタートを待つ。ポンチョを持ってきてよかった。5分前に、GARMINiPhone上のnike run clubを起動する。3分前にポンチョを脱いでポケットに収める。一旦走り出したら要らなくなると思うが、念のために持っていこう。いつものことながら今回も走りこみ不足で、後半が心配だ。

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スタート。

車椅子マラソンのスタートのあと、9時ジャストにスタート。号砲が鳴った。GARMINの記録をスタートさせる。Hブロックという位置のせいか、なかなか動き出さない。10分を過ぎて、ようやく、ゆっくり動き出した。スタートラインを通過したのは号砲から12分が経過してからだ。iPhoneapple watchの記録も開始する。かなり後ろのブロックだったが、どんどん抜かれていく。しかし気にしないことにする。今回の方針は「体力の温存」だ。長い距離の走り込みがほとんどできていないため、30km以降が心配だ。30kmを中間点のつもりで、極力ペースを一定に保って走ることにする。骨盤とリズムを意識して無心に走る。上町筋から本町通り、中央大通りを経て、森之宮で玉造筋を南下する。日陰に入ると冷んやりして肌寒い位だが、日なたに出ると汗ばむほど暑くなる。玉造筋は道路の左側が日陰になるので、左寄りを走る。鶴橋まで南下し、右に曲がって千日前通りを西へ。すぐに緩やかな登り坂になる。練習不足のせいか、今回はこの坂が長く感じた。坂を登りきり、下っていくと、5km。最初の給水ポイントが待っている。スポーツドリンクを飲み、水は摂らない。

御堂筋。銀杏の匂い。

なんばの交差点を右折し、御堂筋を北上する。曲がってすぐに折り返してきたランナーに出会う。速い。しかも先頭ではない。トップはなんばの交差点を越えて京セラドームのほうに向かっているのだろう。イチョウ並木から落ちた銀杏の匂いが漂っている。途切れなく応援の列が続く。普段はクルマが主役のメインストリートを走るのは気持ちがいい。淀屋橋の交差点で右折し、土佐堀通りを東へ向かう。天満橋の手前で10km。まだ足は大丈夫だ。道が狭くなり、ビルが続くので割と単調な区間。しばらく行くと、右手に大阪城が見えてくる。片町で最初の折り返し。北浜で中之島に渡り、図書館など、歴史的な建築を見ながら御堂筋に戻ってくる。御堂筋の西側を南下する。本町手前で15km通過。ここまでキロ6分30秒前後をキープ。応援してくれる知り合いもいないので道の真ん中を淡々と走る感じ。

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なんばから京セラドーム、通天閣

なんばの交差点を右折し、千日前通りを西へ。高速道路が頭上を走っていて、殺風景な眺めが続く。この辺りは以前の仕事場に近く、懐かしい。大正橋を渡って右折すると京セラドームが見える。手前にショッピングセンターが出来てドームの全貌が見えなくなったのは残念だ。しばらく北上して2つめの折り返し地点を折り返すと20km通過。まだ足は大丈夫だ。千日前通りに戻って、中間地点通過。ここで気を抜いてはいけない。30kmを中間地点のつもりで走ろう。なんばの交差点を右折して南下し、大国町を左折し、3つ目の折り返し地点に向かう。ここで5時間15分のペースメーカーに追いついた。ペースメーカーは観光案内もしてくれていて、通り過ぎる街並みの説明や見所を喋りながら走ってくれる。折り返し地点では、通天閣が見えるが、ほんの一瞬で、しかもビルの間にに見えるので、意識して横を向かないと見逃してしまう。初めてのランナーは、ペースメーカーから教えてもらわないと見ることができないだろう。ここから先はランドマークとなる建物もなくなり、景観は単調になり、疲れも出てくるので、ランナーにはつらいコースとなる。

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元気をくれる人。その1:仮装ランナー。

後ろのほうが歓声とそれに応える「ヒィー!」という叫び声が近づいてくる。ショッカーの仮装をした二人組は人気者で、応援に応える「ヒィー!」という叫びは爆笑を呼んでいる。彼らは僕よりも少しだけペースが速くて、追い抜いていくのだが、すぐに沿道の観客に捕まって、記念写真を撮ったりしていて、僕のほうが追い抜いてしまう。しばらくすると、また、あの叫び声が近づいてきて…。ということを何度も繰り返しているうちに10km近くをショッカー氏と一緒に走ってしまった。今回は、あまり過激な仮装ランナーに出会わなかったが、仮装は、他のランナーにとっても、疲れを紛らわせてくれる貴重な存在である。彼らのチャレンジ精神にはいつも感服する。

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元気をくれる人々。その2:ディープな応援者。

後半、苦しくなってきた時、元気をもらうために沿道の応援に応えることにしている。大阪マラソンの魅力の一つが、後半、南に行くほどディープになる応援だ。ご近所のおばちゃんやおっちゃんたちがキツめの言葉で励ましてくれるのには、かなり元気づけられる。今年は気のせいか、そんな「ナニワの応援」が少なくなったような気がする。

元気をくれる人々。その3:美形ランナー(後ろ姿)。

スタートして、しばらくすると、自分と周囲のペースが一致してきて、同じペースのランナーと並走するようになる。いつものように、その中で自分と同じリズムで走るランナーを見つけて勝手にペースメーカーになってもらう。僕の場合、「勝手にペースメーカー」は、なぜか女性、それも美形ランナーでないとダメなのである。(美形といっても、後ろ姿のみ)どんな理由からかわからないが、男性だと、すぐ見失ったり、離れたりしてしまう。スタイルやランニングフォームの美しい女性や、長い髪をなびかせて走っている女性ランナーの後を走ると、スムーズにペースを保てるのだ。同じような話を他のランナーのブログでも読んだことがある。きっと、ランニングのような運動をしていると、身体の本能的な能力が高まって、異性に対する感度が鋭くなり、それによって運動機能も少し向上するのではないか、という勝手な理屈。

中国人ランナーに囲まれる。

四ツ橋筋を南下しはじめてしばらくすると、後ろから集団が追い抜いていった。彼らは互いに声を掛け合いながら、走っているようで、けっこう騒々しい。中国語のようだ。追い抜かれる一瞬、中国語に取り囲まれたような錯覚に陥った。いまや京都などの観光地で中国語に取り囲まれるのは珍しくないが、マラソンでは初めての体験だ。今回は、中国、韓国など、アジアの参加者が以前より多かったような気がする。日本人がホノルルやニューヨークマラソンに参加するように彼らもツアーで参加しているのだろうか?

30kmでも、まだ脚は動いている。

リズムに注意して、一定のペースを心がけたせいか、25kmを越えても、まだ脚は動いている。なんとか完走できそうな気がしてきた。30km過ぎの給食コーナーで、いなり寿司、どら焼きなどを食べて、一息つく。前回の時は32km付近でU君が仮装で応援してくれたことを思い出して姿を探すが見つからない。住之江公園で右に曲がり、南港へ向かう。ここも新交通が頭上を走る殺風景なコースだ。そして35kmを通過。さすがに脚が動かなくなってペースが上がらない。持参したエアサロンパスを使用し、給水コーナーの水をふくらはぎにかけて冷やす。そして南港大橋の登りは少し歩くことにした。坂の頂上から再び走りはじめる。南港に渡って、東の直線路に中学の同級生のA君がカメラマンとして撮影しているはずだ。歩いている姿を撮られるわけにはいかないので、走り続ける。東の直線の道路脇を注意しながら走るが、見当たらない。カメラで隠れて顔が見えないのと、帽子を被っているカメラマンが多く、ランナー側が発見するのは難しい。このまま淋しい「ぼっちマラソン」で終わるのか、と諦めかける。脚はもう動かず、1キロ7〜8分のペースでゴールをめざす。ゴール直前、観客の中から突然名前を呼ばれ、声のほうを見るとU君がいた。「さすがです!ナイスラン!」という叫び声が嬉しかった。ありがとうU君。ぼっちマラソンにならずに済んだ。彼に感謝しながらゴール。

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 走り終わって。

ゴール後、完走メダル、タオル、スポーツドリンク、あんパンを受け取って、荷物受け取りコーナーに行く。荷物を受け取った後、3階の更衣エリアへ。両膝の関節付近にだるさと痛みはあるが、歩くのに支障はない。身体を拭き、着替えて、出口へ向かう。待ち合わせている人もいないので、うまいものコーナーもパスして、さっさと中ふ頭の駅に向かう。いつもはニュートラムコスモスクエア駅まで乗って地下鉄中央線に乗り換えるが、今年は住之江公園まで乗って、地下鉄に乗り換えるルートで帰ることにする。少し時間はかかるが、混雑が少しはマシかもしれない。地下鉄の住之江公園から四つ橋線西梅田へ。このルートは、途中までマラソンコースの後半とほぼ同じところを逆にたどることになり、走った距離が実感できるのが面白い。大阪駅から福知山線新三田行きの快速に乗る。幸い座ることができた。家に帰りついたのが5時前。風呂に入って洗濯を済ませる。当日開かれた全日本女子大駅伝の録画を見ながら夕食。11時前にベッドに入った。

ネットタイム5時間4分40秒。グロスタイム5時間17分16秒。前回の大阪マラソン2014よりは良かったが、今回も見るべきところなし。夏に練習しなければならない秋のマラソンは本当に難しい。この後は、毎年出ている12月の宝塚ハーフと、初めて当選した2月の京都マラソン。ちゃんと練習しなければ。