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NHKスペシャル新・映像の世紀「02 グレートファミリー新たな支配者」

NHKスペシャル 新・映像の世紀「02 グレートファミリー新たな支配者」。録画しておいたのをようやく視聴。「01 百年の悲劇はここから始まった」もよかったが、今回も見応えがあった。20世紀に入って急速に台頭してきた大富豪たちに焦点を当てて資本主義の爆発的な発展と、その光と影を描いたドキュメンタリー。ロックフェラー、J.P.モルガン、ヘンリーフォード、デュポンなどのファミリーの歴史、1929年に始まる大恐慌に翻弄される世界を、新たに発掘された貴重な映像を交えて紹介する。

ロックフェラーセンターのクリスマスツリー。

番組の始まりは、ニューヨーク、ロックフェラーセンターの巨大なクリスマスツリー。ロックフェラーは、当時アメリカ各地で採掘が始まっていた石油に目をつけ、巨万の富を築いた。彼は、自らは採掘に手を出さず、掘り当てられた石油を買い集め、精製し、販売するビジネスを立ち上げる。さらに石油を精製する技術を高め、どんな品質の石油でも精製できるシステムを作り上げた。彼が精製し販売する石油が世界の基準になることを示す「スタンダード石油」を社名とした。全米の石油産業でのシェアは90%に達していたという。ロックフェラーは、大統領よりも有名なスーパースターとなり、メディアは彼と彼の家族の生活を競って報道した。しかし民衆との格差は広がる一方で、各地でストライキや暴動が発生する。スタンダード石油の従業員たちが起こしたストライキを、ロックフェラーは武力で鎮圧し、30人もの死者が出た。

空前の繁栄と突然の暗転。

戦勝国に貸し付けた多額の債権を回収するために、ドイツに多額の賠償金を課すことを主張した金融王モルガンは、USスチール、GEなどの大企業に融資し、政治にも強大な影響力を及ぼした。この他、自動車王のヘンリー・フォード、発明王エジソン、火薬メーカーであり、ナイロンなどの化学製品で財を築いたデュポンなどが紹介される。彼らの一族はグレートファミリーと呼ばれ、アメリカを世界一の経済大国に押し上げる。空前の繁栄を遂げるアメリカ。その富に惹かれて大量の移民がやってくる。ロシアの迫害を逃れてやってきたユダヤ人は映画ビジネスを始めようとするが、映画の様々な特許を握っていたエジソンの支配を逃れ、西部に移動し、ハリウッドで映画産業を立ち上げる。美容師から化粧品メーカーを立ち上げたマックスファクターなど、多くのサクセスストーリーが生まれた。自動車や住宅のローン販売など、現在につながる金融の仕組みも、この頃生まれている。さらに投資熱も高まり、わずかな資金で株が買える仕組みが人気を集めていた。景気の過熱を懸念するフーバー大統領に対して、モルガンは、「経済がコントロール不能に陥っていることを示唆する要素は何もない。我々は世界で最強の富と確固たる未来を持っている」というレポートを提出した。その5日後、ウォール街で株が暴落した。借金をして株を買っていた人たちは次々に破産。恐慌は、またたく間に世界に広がっていく。モルガンは議会の聴問会に召喚される。過剰な投機をあおり、自分はいち早く資金を引き上げ、暴落の被害を免れたことや脱税の罪に問われたのである。それから80年後、我々は同じ場面を見ることになる。リーマンショックで。

ケインズの言葉。「資本主義は、成功ではなかった」

今回、最も印象に残ったのが、ウォール街の暴落から始まる世界恐慌を描いた後、ケインズの以下の言葉がテロップ入りで紹介される場面だ。

「今、 我々がそのただ中にいるグローバルで、かつ個人主義的な資本主義は、成功ではなかった。それは、知的でなく、美しくなく、公正でもなく、道徳的でもなく、 そして、善ももたらさない。だが、それ以外に何があるのかと思うとき、非常に困惑する」ケインズ 論文「国家的自給」(1933年)より

いまから80年以上前の言葉が、21世紀の今も、一言一句そっくりそのまま通用することに驚く。資本主義は、大恐慌時代以上に、電子マネー、インターネット によって、スピードと規模を増し、世界を席巻するようになっている。それによって世界の格差はますます広がり、紛争や難民、テロにつながっている。資本主 義を全否定しながら、それ以外の選択肢を提示できない経済学者の苦悩が伝わってくる。世界経済を襲った大恐慌で、人々は資本主義に絶望する。その絶望の中から、ドイツ、イタリア、日本で、ファシズムが台頭してくる。

ロックフェラーの孫が建てたツインタワー。

象徴的なエピソードがある。ロックフェラージュニアは、資本主義が健在であることをアピールするために、巨大なロックフェラーセンターを建設する。この建設よって、7万人の雇用が生まれたという。それに感謝した労働者たちがポケットマネーを出し合って巨大なクリスマスツリーを立てたのだという。そして、ロックフェラー一族の哲学である「World Peace  Through Trade」(自由貿易による世界平和)をアピールするためにロックフェラーの孫が建てたのは、僕らが見慣れた、あのツインタワーだった。それは「World Trade Center」と呼ばれた。

加古隆パリは燃えているか」の旋律。

前回の時、サウンドトラック盤のCDを思わず買ってしまったが、今回もアレンジを変えて登場。番組の中で、メインテーマである「パリは燃えているか」の旋律が聴こえてくるだけで、否応なしに感情を鷲掴みにされてしまう。悲しいような、愛おしいような、とてもエモーショナルな音楽である。かなりシリアスでシビアなドキュメンタリーなので、音楽はもっと控えめでよいかな、と思うのだが…。この旋律が流れてくると「やっぱりそうなんだ。あの出来事が現在のあの出来事につながっているんだ。人間って、どうしようもなく愚かで、悲しい生き物だよね。歴史って因果応報!」みたいな判断停止状態になってしまうような気もして、もっとドライな音楽でもいいのではと思う。まあ音楽も番組の大きな魅力のひとつではあるのだけれど…。音楽以外にも、ナレーションや、演出が絶妙で、思わず涙が出そうになる場面がある。今回もサウンドトラック盤CDを購入してしまった。