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松林弘治「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」

僕には子供もなく、しかもオヤジでもあるので、ほぼ関係ない本である。しかし、この本に書かれていることはほぼ正しいと思う。茂木健一郎氏も、若者に向けて「これからは英語とプログラミングが必須科目」と言っている。僕自身も、アプリ開発やインターフェイスデザインなど、ITビジネスの端っこに関わった経験から、プログラミングは、英語と並んで21世紀の「読み書き」であると感じるようになった。しかし、なぜプログラミング教育が必要なのかは正直なところよくわかっていない。本書を読めば、その理屈が理解できるかもと思って購入。それにしてもタイトルがひどい。「あなたも苦労せずに億万長者になれる」系のノウハウ本みたいに見える。このタイトルのせいで、購入を躊躇する人も多いのではないか。

ゲームで遊ぶのではなく、ゲームを創ろう。

本書の冒頭で、オバマ大統領が、2013年、国民に向けて「プログラミングしよう」と呼びかけたスピーチが紹介される。「新しいビデオゲームを買うのではなく、作ってください。最新のアプリをダウンロードするのではなくデザインしてください。それらを単に遊ぶだけでなく、プログラムしてください。」と大統領は語りかける。さらにスティーブ・ジョブズビル・ゲイツマーク・ザッカーバーグなど、ITビジネスの創業者たちが自らプログラミングできたことにも触れ、将来のビジネスにプログラミングの素養が不可欠になりつつあると主張する。タイトルに関係ありそうな部分はこの部分のみ。そして、米国のみならずやヨ世界各国が国をあげて子供のプログラミング教育に取り組んでいる現状が紹介される。日本においても遅ればせながら、子ども向けのプログラミング教育の必要性が叫ばれるようになり、企業、NGOが様々な取り組みを始めているという。

リテラシーとしてのプログラミング。

いまやコンピューターやソフトウエアは社会のあらゆるところに使われており、プログラミングは「新しい読み書き」になりつつある。またプログラミングにおける論理的な思考法や、複雑な物事を小さな要素に分解していく手法などは、子どもたちが将来プログラマーにならなくても役に立つという。このあたりのロジックは理解出来るが、以前から言われてきたことのような気もする。

文系人間にもわかるプログラミング入門

3章からは、著者が主張するプログラミングとは、どんなものなのか?文系の人間にも理解できる言葉とレベルで教えてくれる。わかりやすいように、チケットの自動販売機やお風呂の自動給湯システムを例にあげて解説してくれる。実際にかなりわかりやすいと思うのだが、文系頭200%の自分には、けっこう難しいと感じられた。これまで何度も目にしたことがあるフローチャートの意味も、恥ずかしながら本書ではじめて理解できたことを告白しておこう。「アルゴリズム」の概念も、学校の先生から生徒への連絡システムの例えで納得。

日本ではどんなプログラム教育が受けられるか?

プログラミングの概念を理解した後は、これから子どもにプログラミングを学ばせようとしたら、どのような「場」があるのか、どのようなプログラミング教育を行っているのかが具体的に紹介されている。日本の場合、国や公立の学校などでの対応は、これからのようで、民間のNGOや企業によるスクールやセミナー、イベントが中心となる。小学生でも、プログラミングを基礎から学んでアプリを作ったりするキャンプや合宿のようなイベントもあるらしい。著者にも子どもがいて、実際に学ばんでいる様子も紹介されている。実際に子どもにプログラミングを学ばせようとする親たちにとってのガイドブックになっている。

どんなプログラム言語を学べばよいか?

プログラミングを学ぶには、プログラム言語を学ぶ必要がある。しかし種類がたくさんあって、それらは毎日のように改良され、しかも次々に新しい言語が開発されているため、この言語を学べば間違いないという言語はないらしい。子どもがプログラミングを学ぶための言語が幾つか開発されており、それらを学んでプログラミングする環境も充実してきているという。またキーボードを使わずに、画面上のブロックを組み合わせるだけでプログラミングできる環境も用意されており、就学前の子どもでもプログラミングに挑戦することができるという。また、コンピューター上のバーチャルな世界だけでなく、実際の物理的なロボットを動かすレゴ・マインドストームのようなロボットプログラミングも進化を遂げているという。

プログラムという必須科目。

本書を読み終えて、結局、なぜ子供にプログラミング教育が必要なのか?という疑問への明快な答は得られなかったと思う。しかし、プログラミングの初歩的な概念を理解してみると、いままで以上に必要だと感じている自分がいる。プログラミングとは、人が世界と自分とをつなぐインターフェイスなのだと思う。そのインターフェイスを通じて、子どもたちは世界を理解し、世界に対して働きかけていく。そこにはアプリやソフトを使いこなすだけでは決して得られない可能性が広がっている。もしも今、僕に子どもがいたら、絶対にプログラミングと英語を学ばせるだろう。タイラー・コーエン著「大格差」が主張する格差は、こんなところから生まれてくるではないだろうか。子どもを持つ親を見つけては、本書を奨めてしまう今日このごろ。