村井俊治「地震は必ず予測できる!」

メルマガ「週刊MEGA地震予測」の発行元「JESEA」顧問。

現在、僕が唯一有料で購読しているメルマガ「週刊MEGA地震予測」。著者は、このメルマガを発行しているJESEA(地震科学探査機構)の顧問である。著者は元々測量工学が専門の研究者で地震の研究者ではない。その彼が地震予測のメルマガ発行に携わっているのには理由がある。彼はGPSを利用した測量技術で地盤や地殻の微細な動きを測定し、地震を予測する手法を開発し、その検証に取り組んでいた。

3.11を予測。しかし公表できなかった。

2011年、彼は別の地震予測の研究をしている会社から日本列島に大規模な地殻の変動が起きていることを知らされる。3.11の1カ月前のことである。通常は数カ所の電子基準点が変動するだけだが、この時は、福島から茨城、長野にまで多くの基準点で変動が起きていた。検証の結果、著者は、「これは巨大な地震の前兆だ!」と確信するが、その会社の親会社から公表することを禁じられる。また、地震の研究者でもない一民間人が世間をパニックに陥れるような「予知」をすることはお役所から禁じられている。公表しないと大変なことになるぞと思ったが、どうにもならず、著者は沈黙を守った。その一カ月後、東日本大震災が起きた。死者・行方不明者は2万人を超え、多くの人びとが苛酷な避難生活を強いられた。著者は後悔の念に苛まれ続けた。会社との間に交わされた守秘義務を守ったにすぎないが、人として、研究者として、それでよかったのか。どんな批判を受けようと、公表すべきだった。公表して取り合ってもらえなくとも、ネットで話題になれば、少しは人々の関心を引いて救われる命もあったかもしれない。

後追いは止めよう。

東日本大震災のデータを、著者は後追いで徹底的に検証してみた。そこには巨大地震の前兆ともいえる現象がはっきりと現れていた。巨大地震の直前に発生するというプレスリップさえも見つけることができたという。しかし、地震が起きてから後追いで持論が正しかったと証明しても何の役にも立たない。すでに犠牲者は出てしまっているのだ。著者が地震予測の研究をはじめてからすでに10年が経っていた。ここまで来た以上、もう後追いの研究検証はやめよう。これから起きうる地震を予測して、世の中のために尽くす道を探るべきだ、と著者は決意する。

民間人による予測は占い。

地震を予測しようという決意をしても、様々な壁が立ちはだかっていた。その一つがお役所である。著者によれば、電子基準点を地震予測に使用することは、口頭ながら禁止されていたという。東日本大震災の後、日本地震学会は「地震の予知は現時点では非常に困難」と宣言するなど、お役所共々、地震予知に関しては及び腰になっていたという。そこで著者は、地震を扱う役所の担当者に電話をかけて「一民間人が地震予測をしてもいいのでしょうか?」と聞いてみた。すると「別に地震の予測はしてもいいですよ」と言うではないか。しかし次のような付け足しがあったという「してもかまいませんが、ただし、役所としては、民間人による予測は占いとして扱います」口頭ではあったが一応お墨付きは得られた。それじゃあ、地震の占いをしようじゃないかと著者は開き直って、地震予測の道へ邁進していく。

地震予測サービスをビジネスに。

「民間で地震予測をする」ということは、つまり収益を上げるビジネスを起ち上げるということである。定年まで研究の仕事をしていた著者にそんなノウハウはなかった。途方に暮れていたところで、二人の人物と出会う。衛星放送関係の仕事の後映画のプロデューサーをしていた橘田寿宏氏と薬品関係の仕事をしていた谷川俊彦氏は著者の話を聞き、協力を申し出る。二人とも東日本大震災の経験から、貧乏になってもかまわない、無給でいいから、世の中に役立つことがしたいと熱望していた。こうして、阪神大震災から18年目の2013年1月17日、著者が顧問、橘田氏が社長、谷川氏が取締役の、株式会社日本地震科学探査機構(JESEA)が設立された。

現在の、有料メルマガによる予測情報の配信サービスの形は、橘田氏が発案したという。2013年2月7日、著者たちの活動に賛同してくれたわずか24名の会員に向けて最初のメルマガが配信された。4月には橘田社長の紹介で映画監督の岩井俊二に出会い、彼が東日本大震災がきっかけで立ち上げたワークショップ「ロックの会」で講演を行う。これで会員は100名近くに増えた。さらに週刊ポストが特集で取り上げる。記事のタイトルは『地震予知で特許を取った異端の東大名誉教授の「警鐘」』これを機に、男性誌、女性誌、夕刊紙などに取り上げられ、会員は順調に増えていった。そして2014年3月9日放送の「Mr.サンデー」で「南海地方で3月末までに来ます」と明言。5日後の3月14日に、南海地方に含まれる伊予灘マグニチュード6.2、震度5強地震が発生した。予測通りの大きな地震にも関わらず、死者も発生しなかったことは世間の大きな関心を引いた。これによって会員数はいっきに1万人を突破した。

地震予測のコロンブスの卵。

JESEAの地震予測の具体的な方法は、本書を読んでもらったほうがいいと思う。GPSを利用して土地を測量するために国土地理院が日本国内に設置した電子基準点は、約1300箇所ある。この基準点の変動を解析して、地殻の変動を読み取り、地震の発生を予測するという方法は、地震予測における「コロンブスの卵」であり、地震学の研究者からはいまだ認められていないという。しかし、この手法は、過去の多くの地震をかなりの精度で予測できたという大きな実績を蓄積していることは間違いない。もちろん、この方法といえども完璧ではなく、まだまだ進歩の余地があるという。特に、国土地理院による電子基準点のデータを得られるのが2週間遅れであるという事実も、今後、予測の精度が高まっていくと問題になりそうだ。

著者は東大生産技術研究所で、教授を定年まで勤めた研究者である。さらに地震には門外漢であった著者が、従来の地震学のアプローチとは違う方向から地震に取り組み、特許の取得や、役所の無理解、地震学者からの無視など、様々な障害を乗り越えながら地震予測をめざす姿には頭が下がる。

現在の地震発生の予測は、確率論に過ぎない。

本書を読んで驚いたのは、首都圏直下地震東海地震の報道などで、「この先◯◯年以内に地震が起きる確率は◯◯パーセント」という数字が発表されるが、その数字は地球の地殻の構造やメカニズムの解析から生まれたものではなく、過去の地震発生の規模と頻度から算出した確率にすぎないという事実だ。

「MEGA地震予測」を購入。

遅ればせながら2014年12月からメルマガを購読しはじめた。危険度の高い順から「要警戒地域」、「要注意地域」、「要注視地域」が知らされる。僕の住む兵庫県は、南海地方に近く、昨年から要注意状態が続いている。少し心配だ。しかし、何の情報も無いよりはずっといい。

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