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小出裕章「原発のウソ」

福島の原発事故をめぐる情報はいったいどれが正しいのだろう。震災発生直後から今に至るまで、東電や政府から出てくる情報が、ほとんど信用できなくなった。マスコミの報道で登場する専門家や学者たちの発言も、いまひとつ信用できない。何とか信頼できる情報・意見はないかといろいろ探しているうちにたどり着いたのが、この人。京都大学 原子炉実験所助教小出裕章。経歴がユニークだ。原子力の平和利用を志して東北大学工学部原子核工学科に入学したものの、原子力を学んでいくうちにその危険性に気づき、以来、40年にわたって原発反対の姿勢を貫いてきた研究者。原子力の研究者でありながら、原発反対を訴え続ける人だ。YouTubeで著者の名前で検索すれば、いろいろな講演やインタビューの動画が見られる。著者が勤める京大原子炉実験所は大阪府熊取町にあり、かつて、ここに勤める6人の研究者が原発反対を訴えたため、「熊取六人衆」 と呼ばれたこともあるという 。官も民も日本全体が原発推進派という中で、原発反対を唱える研究者なんて決して恵まれた境遇ではなかったと思う。大学の研究者というよりは高校の先生のような風貌。「フクシマ」の事故が起こるまでは、注目されることも少なかったという。それが今や講演会場に入りきらないほど聴衆が集まるようで、苦笑いをしている著者の表情にも好感が持てる。本書は、著者の講演やインタビューを編集者が再構成し、情報やデータを補足したもの。この本の中には、自分の知りたいことが、ほぼ書かれている。それも明快に。
福島原発の事故処理は危険な状況が続いている」「最悪のケースは水蒸気爆発で、それが起こるとチェルノブイリを超える被害が出る可能性がある」「放射能は少ない被曝でも危険である」等々、コワイ話がぞろぞろ出てくる。特に1999年に起きた東海村JCOの臨界事故で大量の放射線を浴びた作業員の治療と死亡にいたるまでの経過は恐ろしい。そして、日本の原子力行政の信じられないような実態プルサーマルの危険性、さらに高速増殖炉もんじゅ」の危険で巨大な無駄遣い…。六ヶ所村の再処理工場の危険性。化石燃料の枯渇ののウソ。さらに原発が動かないと夏の電力ピークに停電が起きるという話は、電力会社が原発推進のために生み出した壮大なウソであること。著者によれば、原発による電力の比率を上げるために電力会社は、火力発電や水力発電所の稼働を少なくしているという。それらの眠っている非原子力発電所をふる稼働させれば、夏のピーク時でも十分にカバーできるという。本書の中で語られる「反原発」の主張は、他の反対派ともほぼ共通している。後に読んだ広瀬隆福島原発メルトダウン」でも本書と同じ理屈が語られる。静かで地味な風貌の著者だが、その主張は過激で鋭い。著者の主張に対して、多くの反論があることは知っている。どちらが正しいかは自分にはわからない。しかしどちらの人間を信用できるかと聞かれたら、自分は、間違いなく著者を選ぶだろう。原発の本を読みたかったら、まずこの本を薦めたい。