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レイチェル・ボッツマン/ルー・ロジャース「シェア」

三浦展「これからの日本のために『シェア』の話をしよう」に続く「シェア」の2冊目。2冊とも、自分にとって、とても重要な本になると思う。そして、ここ数年、考え続けている問題の答があると思った。しかし読んでいる途中は、かなり辛かったことも告白しておこう。この本は、いま自分たちが生きている社会、自分たちが関わっている経済のシステム、そして自分自身が現在続けているライフスタイルの、ほぼすべてを否定する本なのである。だから読むのには覚悟が必要だ。そして、読んだ後は、もう元には戻れないということも…。それにしてもアメリカのジャーナリストが手がける、この手のドキュメンタリーは、どうしてこんなに面白いのだろう。以前に紹介した「ハチはなぜ大量死したか」「人類の消えた世界」「Born to Run」等も同じ手法で書かれ、同じ面白さがある。登場する人物たちがいきいきと描かれ、紹介されるエピソードも面白い。日本では、こういう手法のドキュメンタリーってあまりないような気がする。
本書のパート1の第一章「もうたくさんだ」では、以前に読んだ「人類が消えた世界」でも紹介された「太平洋ゴミベルト」の話が出てくる。日本とハワイの間の太平洋上、はるか沖合に、テキサス州の2倍の面積、ところによっては深さ30メートルにわたって大量のゴミが浮遊している海域があるという。海流の関係で、世界中のゴミが、そこに集まってくるのだ。ペットボトル、おもちゃ、靴、使い捨て容器、ショッピングバッグ、ラップフィルム…。その9割がプラスチックだという。この「負のモニュメント」を創りだしたのは、私たちが現在生きている消費主義社会である。大量に生産し、大量に消費する、使い捨て社会。それは、いつ、どこで始まったのか、それを検証するために著者は20世紀初頭のアメリカにさかのぼる。最初の使い捨て製品は、紙コップだった。やがてクリネックスティシュー、チップ綿棒、バンドエイド、紙タオル、使い捨ての買い物袋といった、あらゆる使い捨て製品が生み出され、「使い捨て」こそが「便利」で「自由」な生活を表すようになった。そして、「先に購入し支払いは後で」という消費スタイルを生み出したクレジットカードの発明、短いサイクルで製品を陳腐化し、買い替えを促すモデルチェンジの発明。さらに買い物そのものを楽しむ施設:ショッピングモールの登場…。1996年にはラップトップコンピュータの買い替えサイクルは6年だったが、いまでは2年である。日本における携帯電話の買い替えサイクルは1年である。。人々はさらに多くを消費するために働き、時間を奪われていく。1980年から2000年の間にアメリカ人の購買力は3倍になったが、その果実を楽しむための時間は失われる一方だ。その結果、何が起こっただろう、大量に買われ、忙しくて使われないままの製品を保管しておくレンタル倉庫が全国各地で作られている。三浦展の本では「シェア」の対立概念は「所有:have」だったが、本書では「果てしない買い物と消費=ハイパー消費」がそれに当たる。しかも、その消費を維持するために、生産から流通、販売の過程で大量のゴミ、廃棄物が生まれる。それは目に見えている製品の数十倍もの量になるという。そして、これらの廃棄物の多くが処理されないまま海や地中や大気中に捨てられ続けている…。この産業革命以降の200年を「ネズミ購」のようなものであると著者は主張する。「人間は天然資源を使い尽くし、有害ガスを大気中にばらまき、私たちが死んだ後も消えてなくならない廃棄物を生み出した。つまり私たちは返すつもりも、返すあてもなく、ただ取り続けてきたのだ。」この本を読んでいて愕然とするのは、自分の職業が、この「ハイパー消費社会の暴走」の片棒を担いできたことだ。マーケティング、差別化、新製品、新発売、最新、最先端、ニーズからウォンツへ…。毎年のように新しい製品が生まれ、自分たちは、それを売るために際限なく広告を作り続けてきた。その結果、人々は幸せになっただろうか?地域の崩壊、核家の崩壊、雇用の崩壊、そして環境破壊…。ここまで読んだ印象は、以前読んだ「ハチはなぜ大量死したか」「人類の消えた世界」と似ている。生半可なやり方では、世界は変わらない。過激ともいえる方法でしか、変えられない。「奇跡のリンゴ」の木村氏のような、ほとんど神がかりのような過激な方法でなければ、この「ハイパー消費」のシステムは変えられない。では、どうすればいいのか?「シェア」という概念は、その答になっていると思った。
本書では、様々な「シェア」のシステムが紹介されている。注目すべきはシェアと関係あると見なされていなかったビジネスも、シェアのビジネスとして取り上げられている点だ。オークションの"e Bay"やクレイグズリストなども「シェア」ビジネスであるという。後半のシェアビジネスの紹介については、きちんと考察したいが、まずは読んだ時の強い印象を記しておきたい。