須賀敦子の「やーね」


先週末、朝日カルチャー講座で湯川豊氏の「須賀敦子を読む」という講座を聴講。2月23日の日記でこの著書を取り上げたのも、この講座の予習を兼ねた再読だった。しかし結果は、かなり失望。講座で著者が語ったことは、すべて著書の中に書かれていたことで、講座を聞く意味がほとんど無かった。他の受講者の気持ちも同じだったらしく、質問の時間に、一人の受講者がやんわりと、著者と交流があった生前の須賀敦子の思い出を語ってほしいと希望を述べた。そのことに著者は腹を立てたらしく、「須賀敦子を知りたいなら『作品』を読みなさい。作品がすべてだ。あなたは須賀敦子の作品を全部読み切ったと断言できるのか」と逆に強い調子で切り返した。著者の気持ちもわからないではないが、受講者の多くは著者の「須賀敦子を読む」を読んでいたので、自分と同じ思いを抱いていたと思う。著者の言うように「作品を読むことに徹する」にしても、講義の中で、彼の著書には書いていなかった「作品の読み方」を語るべきではなかったか。受講者が、須賀敦子の熱心なファンだとすると、講義は受講者を舐めた、いいかげんな「手抜き講義」と言われてもしかたがないと思う。著者の話で、いちばん面白かったのは、著者が須賀敦子の口癖として披露してくれた「やーね」だ。今でも耳に残っているという、この言葉は、100の言葉よりも須賀敦子の人柄を雄弁に伝えてくれる。http://d.hatena.ne.jp/nightlander/20110223/1298442071#c