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スティーブン・ハンター「蘇るスナイパー」

冬休みの読書は、エンターテインメントに徹した2作品。こたつに入ってお酒を飲みながら、大好きなジャンルの小説(主として冒険&軍事&SF)を読むのは至福の時間。1作目は、久々の「スナイパー物」。著者は、スティーブン・ハンター。主人公は、元海兵隊の狙撃兵のボブ・リー・スワガー。ベトナム戦争で80人以上の敵を倒した伝説の英雄、ボブ・ザ・ネイラーだ。本書は、彼を主人公にしたシリーズ、「極大射程」「ブラックライト」「狩りの時」「四十七人目の男」「黄昏の狙撃手」に続く第6作にあたる。最初の3作は、巧みなストーリーと速いテンポ、さらに緊張感あふれる銃撃シーンの描写、銃器の蘊蓄などで一気にハマってしまった。しかし4作目と5作目が変な方向へ行ってしまって、ファンを失ったと思う。自分も途中で放り出してしまった。本書は前記の3作の世界に帰ってきたともいえる作品だ。
ベトナム戦争時代に反戦運動に関わった4人の男女が射殺される。犯人は、超一級の腕を持つスナイパー。捜査が始まってほどなく、一人の元海兵隊の狙撃兵だった人物が容疑者として浮かび上がる。彼はベトナム戦争で93人の敵を倒したナンバー1スナイパーだったが、最近、彼の記録を破る96人の記録を持つ狙撃兵が存在したことが判明し、彼を悩ませていた。妻にも先立たれ、アルコールに逃避するようになっていた彼は、もう一度ナンバー1の地位を手に入れるために、あと4人の狙撃を実行する。ターゲットは、かつてベトナム戦争に反対した活動家。FBIは容疑者を追い詰め、とあるモーテルで彼を発見する。彼は犯行に使用したライフルで自殺を遂げていた。しかし捜査にあたったFBIの捜査チームのリーダーは、あまりに完璧な証拠や捜査の経緯に疑問をいだき、主人公 ボブ・リー・スワガーに調査を依頼する。ボブは、様々な捜査資料を調べる内に、狙撃が、人間に不可能な精度で行われていることを発見する。容疑者が使用したライフルとスコープでは、その精度の狙撃は不可能であることを突き止める。狙撃は、最新の電子技術を駆使したスコープシステムで行われており、犯行を終えたのち、容疑者の所有していたスコープに付け替えられていたことが判明する。そのような電子技術を駆使した射撃システムを開発している企業は限られている。そのシステムは“iSniper”と呼ばれている。容疑者は、何者かに犯人に仕立てられたのかもしれない。捜査を進める内に、何者かがFBIに圧力を加えてくる…。これ以上書くとネタばれになるから書かないが「極大射程」を彷彿とさせるストーリー展開、そしてお約束のガンファイト。今回は、スナイパー対スナイパーの対決に加え、デジタル技術を駆使した狙撃システム“iSniper”と、スナイパーの中のスナイパーである主人公の“I,sniper”の対決が、クライマックスである。
興味深いのは銃の進化の話だ。あとがきによると本書に登場する狙撃システム“iSniper”は現実には存在しないらしいが、現在のカメラ技術やオプチカル・エレクトロニクスの技術をもってすれば可能だろう。ゴルフなどで使われるレーザー距離計、手ぶれ補正技術、さらに最近では顔認識の技術などを組み合わせれば、すぐにでもできそうな気がする。それと捜査の過程で明らかになっていくアメリカの銃社会の実情。特に北米で数百人ともいわれるスナイパーたちの存在。その多くは軍人だが、警察の中にも存在する彼らは、アメリカの銃社会の頂点に立つエリートたちであるという。
本書だけでも充分楽しめるが、「極大射程」「ブラックライト」「狩りの時」の3部作から読むと、登場人物の相関がわかり、奥行きが増す。