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元旦の雪

正月早々、こわい思いをした。元旦、明石と三田の実家に帰った時のこと。天気予報では、前日の大晦日から強い寒波が日本列島を覆い、近畿地方の南部でも積雪があるかもしれないとの予測がされていた。雪が降るとやっかいだ。しかし、年が明けて、外を見ると、快晴で、雪の降る気配もない。クルマで明石に帰った。ここ十数年、明石に帰るのは、阪神高速神戸線と決めている。近年、有馬〜西宮山口間が開通し、中国自動車道とつながり、さらに便利になった。宝塚〜明石の実家は50分ほどで行ける。渋滞が当たり前の神戸線と違い、北神戸線は、クルマも少なく、快適そのものである。夕方、明石の実家を出発して、三田に向かう。小雨が降り始めていた。第二神明道路から阪神高速神戸線に入って、北上する。北上するにつれ、雪が舞い始めた。あっという間に日が暮れて夜になってしまった。道路情報は「北神戸線が凍結注意」という表示。北神戸線は便利だが、六甲山系の北側を通っているため、凍結することがある。また都市高速であるために、積雪などですぐ通行止めになりそうに思えた。それに比べると中国自動車道や山陽自動車道は、積雪でも通行止めになる可能性が少ない。迷った末、山陽自動車道に入ることにする。雪はみるみるうちに激しさを増してきた。路面が見えにくくなり、雪の中を飛行しているような錯覚に捉えられる。走っているクルマの速度は、一気に40キロぐらいに落ちた。最初は雪の路面にタイヤの轍が黒く見えていたが、ほどなく、のっぺらぼうの白い路面に変わってしまう。山陽自動車道の料金所を抜けた先で、クルマを止めて、三田にいる家人の携帯に電話をかけるが、出ない。しかたなく走行を再開する。タイヤチェーンは積んでいるが、いままで一度も装着したことがない。回りのクルマはスタッドレスでも履いているのか平気でどんどん追い抜いていく。山陽自動車道は、北神戸線よりもかなり北を走っており、北神戸線のまま行けばよかったのかもしれない。しかし、三木ジャンクションから入ってしまえば、神戸北まで出口がないので、あと10数キロを走り続けなくてはならない。この状況でブレーキは効くのだろうか。前後に他のクルマがいないのを見計らってブレーキを軽く踏んでみる。滑らない。ゆっくりと減速できる。まだ大丈夫だ。しかし、雪道での急ブレーキ、急加速は厳禁だ。少し安心して、速度を周囲に合わせて上げていく。朝からお節やら雑煮やらをたらふく食べた胃が、緊張で痛くなる。ゆっくり息を吐き出して緊張をほぐしてみる。時間にして30分足らず、ようやく神戸北インターに到着。六甲北有料道路に入って三田に向かう。この時間、このルートを通るクルマは少ないのか、新雪の上を走っているような頼りない感覚。しかし片側一車線なので、道の端がわかりやすい。雪そのものは、湿った大きな固まりで、バシャッとフロントガラスに落ちてくる。明石の実家を出て、1時間少しで三田の実家に着いた。家の周囲は真っ白。しかし降雪は少なくなっている。迎えに出てきた家人が玄関の戸を開けてびっくりした。ほんのついさっき、雨戸を閉めた際にに外を見た時には雪など降ってなかったらしい。夕食を食べ、宝塚に帰るかどうか迷う。家人は、着替えも持ってきてないし、できれば帰りたいという。まあ、タイヤチェーンも積んでいることだし、いざという時は装着すればいい。とりあえず国道176号線まで出ることができたら帰れるだろう。出ることが出来なければ戻って泊めてもらおうということで出発。クルマ通りの少ない住宅街の真っ白な道をそろりそろりと走る。それほど怖い思いをせずに176号に出ることが出来た。こちらはさすがにクルマ通りが多いためか、轍ができていて、走りやすい。しかし雪は止まない。山口町の手前の表示で、阪神高速神戸線が通行止めになっていることを知る。中国自動車道も積雪で50キロ規制になっている。道場、山口町と道はずっと上りである。難関は、その先にある。坂を登り切った、いわば峠の向こう。名塩の手前に急カーブが連続する区間がある。そこが雪で覆われていたら…。と不安がよぎる。坂を登りきり、道が下りになる。気がついたら周囲の景色が一変していた。「あれ、雪が無い…」道路にも、周辺にも雪が見当たらない。しかも降っていた雪は、いつの間にか雨に変わっている。不思議な気持ちになりながら、ほっとして宝塚に向かった。わずか数百メートルも行かない間に違う気象の中を走っていた。「阪神間というのは、六甲山系に守られているんだなあ」とつくづく思った。ほどなく宝塚に到着。宝塚の街には、雪の気配すら無かった。あいにくの雨ではあるが、いつもと変わらない静かな元旦の夜。自宅にたどり着いて、風呂に入った。自分にしては、めずらしく背中と肩の凝りがとれず、胃の強張りもほどけずに、寝床に入っても、なかなか眠れなかった。