疋田智「ものぐさ自転車の悦楽  折りたたみ自転車で始める新しき日々」


「自転車による淀川下り計画」着々と準備中、と書きたいところだが、まったく進んでいない。その前に、まず「それなりの自転車」を購入しなければいけないが、これがなかなか難しい。何となく思っているのがフォールディングバイク(折りたたみ自転車)がいいかな、ということぐらい。東京勤務時代にBD-1を購入し(本書の中でのおすすめ自転車に選ばれている)1年ほど乗っていた。東京勤務を終え、関西に戻ってきてからも自転車への興味は持続しているが、ランニングともうひとつ、新しい趣味を始めてしまったため、自転車ライフのほうは止まったままである。しかし自転車への興味は持続しており、自転車の本や雑誌を時々買っては「何を買おうかな」と悩み続けている。「自転車による淀川下り計画」は、「本格的自転車ライフ」の復活計画でもあるのだ。本書の著者は「自転車ツーキニスト」として、あまりに有名な疋田智氏。自転車に関する本を20冊は書かれているだろう。自宅の書棚にも数冊はあると思う。そんな疋田氏が、自転車にまったく縁のない大人に、「折りたたみ自転車による本格的自転車ライフの始め方」を懇切ていねいに教えてくれる本。1999年に書かれた「自転車通勤で行こう」以来、その教え方は、ますますわかりやすくシンプルになり、しかも痒いところに手が届く細やかさでスキがない。初心者が本格的自転車生活で出会いそうなトラブルとかもしっかりと教えてくれる。特に都会の路上で出会う様々な「危険」と、それを回避する「心得と方法」に関しては、くどいぐらい細かく教えてくれる。自分の東京でBD-1に乗り始める前に、疋田氏の本を読んでおいて助かったというシチュエーションが何度かあった。本書の中でオススメされている自転車はドイツの「BD-1」イギリスの「ブロンプトン」アメリカの「DAHON」の3ブランドのみ。この割り切り方がよい。折りたたみ自転車といっても種類は驚くほどたくさんあって、「折りたたみ自転車入門」みたいなムックを買って、選ぼうとしても、たぶん選べないと思う。この3ブランドは、折りたたみ自転車のメインストリームといってもいい程、完成度も高く、しかも。それぞれ強い個性を持ったいい自転車である。価格も、ママチャリしか知らない人はびっくりすると思うが、リーズナブル。自分が今悩んでいる候補の中にも、この3台はしっかり入っている。折りたたみ自転車の何がよいかというと「折りたたみ」という余計な「メカ」を備えていることだろう。それが自分のようなメカフェチにはたまらないのだ。例えばBD-1の折りたたみメカは、意表を突いていて、複雑さとスタイリッシュさを合わせ持つ、知的で未来的なデザイン。ロードバイクのシンプルな美しさも嫌いではないが、やはりSF未来系メカフェチには変身合体系のフォールディングメカが不可欠なのである。本書は、折りたたみバイクの選択にはじまり、その実用面でのメリット、折りたたみ自転車の買い方、さらに自宅周辺でのポタリングから、都心への通勤、さらにツーリングに至るまで、折りたたみ自転車から広がる本格的自転車ライフの豊かな世界への道程を教えてくれる。基本は、軽やかなユーモアたっぷりの語り口だが、自転車の安全に理解のない行政や、マナーを守らない自転車乗りたちを批判する舌鋒はあくまでも鋭く辛辣である。著者による「日本史の旅は、自転車に限る!」という本も楽しそうだ。「自転車による淀川下り計画」も、きっと琵琶湖・淀川水系で繰り広げられた古代〜現代の日本史を辿る旅になると思うから…。http://d.hatena.ne.jp/nightlander/20100219/1266575780