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梅原猛「葬られた王朝 古代出雲の謎を解く」

数年に一度「古代史マイブーム」とでもいうべき熱中期が訪れ、数カ月の間、古代史関連の本ばかり読む時期が続く。梅原猛の本も、そんなマイブームのきっかけになったりする。「隠された十字架」「水底の歌」「神々の流竄」など…。著者の本は、どれも、いわば文学的な想像力を縦横に発揮させた大胆な解釈が真骨頂。それが学問の世界で受け入れられるかかどうかは別として、読むには楽しい。「葬られた王朝」は、出雲神話についての話である。近年、荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡で出土した大量の銅剣や銅鐸によって、にわかに、それまでまったくのフィクションだと思われていた出雲神話が、実は何らかの現実の歴史を表現しようとした物語ではないか、と考える研究者も出てきたらしい。著者は80代半ばの高齢ながら、実際に出雲を訪ね、古事記日本書紀を徹底的に読み直して、この作品を書き上げた。そのエネルギーは凄い。しかし内容は期待ハズレ。「隠された十字架」「水底の歌」のような衝撃は味わえない。著者が唱える説も、多くの非アカデミックな古代史読み物を読み慣れた自分には、かなり物足りない。「因幡の白ウサギ」や「ヤマタノオロチ退治」は出雲王朝の何を表現しようとしたのだろう。謎に満ちた「国譲り神話」は、古代におけるどのような「政権交代劇」や「征服劇」があったことを暗示しているのだろう。そのあたりの突っ込んだ考証が読みたかった。
しかし面白くなかったわけではない。古代出雲王朝が隆盛を誇った時代は、これまで日本になかったといわれていた「青銅器文明の時代」ではなかったかという考察も面白かったし、播磨一之宮の伊和神社や姫路の射楯兵主神社に伝わる「一つ山」「三つ山」の祭の考察や、さらに国譲りの神話を象徴するような美保神社の「諸手船神事」「青柴垣神事」の考察も面白かった。
古代に出雲王朝が栄えたとして、それは、どのような人々による、どのような国家だったのかは、本書を読んでも、まだまだわからないままである。本書を読むと、出雲に行きたくなるのは確実だ。出雲には、出雲大社はもちろん、荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡など、訪ねたい場所がたくさんある。