柴田哲孝「GEQ」

かなり宿題的に読んだ「1Q84」「太陽を曵く馬」「仮想儀礼」が終わり、一段落。もう少し軽めのエンタテインメントを読んでみようと手に取ったのが、この作品。「GEQ」とはGreat EarthQuake---巨大地震のこと。作者は、「TENGU」「KAPPA」「RYU」という日本の伝説とUMAを組み合わせた作品を読んで、けっこう面白かった。ちょっとクーンツを思わせるところがある。つまりスティーブン・キングより軽めで、マイケル・クライトンほどではないが科学技術に基づくアイデアを創作している。「下山事件ーーーー最後の証言」というドキュメンタリーもある。そんな作者が巨大地震をテーマにエンタテインメント作品を生み出した。1995年1月早朝の神戸を襲った阪神淡路大震災。そこには巨大な陰謀が隠されていた。あの地震には、不自然な点がいっぱいある。阪神大震災を取材していたジャーナリストが、スマトラ沖地震で行方不明になった。神戸の地震は、米国、ロシア、中国が絡んだ巨大な陰謀かもしれない。事実と都市伝説が巧みにミックスされた壮大な謎に挑むのは、米国生まれの日本人ジャーナリスト。彼を助けるのは地震で家族を失ったシンガー…。ちょっとハードボイルドの紋切り型っぽい設定が気になるが、一気に読めた。後半は、テスラの発明や地震兵器、核融合による人工地震発生など、荒唐無稽なほうにどんどん進んでいく。9.11テロにも同じように陰謀があったという。あの地震以来、地震という言葉には強く反応してしまう自分のような人間には、ストレートに楽しめないところもあった。