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金哲彦「走る意味 命を救うランニング」

ランニング初心者として金哲彦氏の本は何冊か読んでいる。中でも「3時間台で完走するマラソン まずはウォーキングから (光文社新書)」は、2008年の東京マラソン挑戦の時の参考書として何度も何度も読んだバイブルだ。著者が提唱する「体幹ランニング」という走り方も理にかなっていて、ふだんのランニングから心がけている。数え切れないほど出ているランニングやマラソンの入門書の中で、著者の本はとてもわかりやすく納得できるのである。本書は、ランニングの教本や入門書ではなく、著者自身のランニング人生を振り返った自叙伝である。気持ちがよいほど、走りひとすじの人生。しかしその道は平坦ではなかった。マラソンや駅伝の解説で見せる優しい語り口からは想像もつかないような、アグレッシブで、波乱万丈の半生である。高校や大学への進学、恩師との決別など、人生の節目ごとで見せる著者の頑固さと決断。さらにそこからの努力がすごい。ただ頑張るだけではなく、新しい手法で道を切り開いていく。日本人として初めて米国ボルダーでの高地トレーニングを行ったのも著者である。2001年リクルートの休部後も、それまでになかったクラブチームを立ち上げ、成功させる等、日本のランニング界のパイオニアであり続けている。さらに2006年大腸ガンの発見と手術。1年後のフルマラソン完走。そして2009年、再びサブスリーを達成…。サブフォーすら達成したことがない自分とはかけ離れたランニング人生だと思うが、走る時に得られる感覚や喜びは、よく理解できる。マラソンに出ると、周囲を走っているランナー一人ひとりの人生のことがふと気になることがある。「なぜマラソンに出る気になったのだろう?」「家族は応援に来ているのだろうか?それとも一緒に走っているのだろうか?」「ふだんは、どこで、どんな練習をしているのだろう?」ひとりひとりに聞いて回りたいと思う。100人のランナーがいれば、100通りのマラソンとの出会いがある。そんなことを思わせてくれる、いい本だ。