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J.H.コッブ「隠密部隊ファントムフォース」

軍事スリラーは大好きなジャンルである。中でも潜水艦もの、ステルス兵器もの、特殊部隊もの、スナイパーものは、書名にその言葉を見つけしだい手当たりしだい買ってしまう。自分はなぜか「卑怯な」戦い方に惹かれるようなのである。海中に、深く静かに潜航して敵艦を狙う。厳重な防衛網をくぐり抜け、敵地深くに侵入し、重要な軍事拠点を破壊する。遠く離れた物陰から、敵側の重要人物に一発必殺の銃弾を放つ…。しかし、もっともワクワクするのは「ステルス」だ。レーダーの電波を吸収する表面素材でできた異様ともいえるスタイルの機体が、夜間、敵の対空網を密かに突破し、精密誘導兵器で軍事施設を破壊する…。ステルスとは航空機の技術だと思っていた。10年ほど前にJ.H.コッブ著「ステルス艦カニンガム出撃」という本を発見した時は驚いた。そうか、船でもステルス技術は有効なのか、と。登場するのは最新のステルス技術を投入した「ステルス駆逐艦」だ。2006年、南極のイギリス基地をアルゼンチン海軍が攻撃、占拠する。たまたま現地付近にいたのは米海軍のステルス駆逐艦カニンガムのみ。カニンガムは、一隻でアルゼンチン海軍と戦うことを余儀なくされる。カニンガムの指揮官は、アマンダ・ギャレットという美しい女性。彼女は最新の軍事テクノロジーを天才的な戦略で使いこなして、強大なアルゼンチン海軍にたった一隻で立ち向かう。ステルス駆逐艦という珍しさと、登場する数々のハイテク兵器。さらに天性の戦士ともいえるアマンダの活躍。他の登場人物も魅力的で、いっきに読めた。このアマンダを主人公にした小説は、どれも飽きさせない。第2作が、中国原潜とカニンガムの対決。第3作が、ステルス駆逐艦をステルス・ホバークラフトに代え、西アフリカが舞台。第4作は、再びカニンガムが登場し、インドネシアの海賊と戦う。第5作は、再びインドネシアだが、船を現代のQシップ(商船に偽装した軍艦)に乗り換え、ファントムフォースという戦闘部隊を指揮する。5作目が出てすでに数年経つが、次の作品が出てこない。出てこないので最近は昔の作品を読み直したりしている。最後の「ファントムフォース」を読み直してみて、最初に読んだのとかなり違う印象を受けた。それは戦闘が一方的すぎるということである。誘導兵器やステルス技術を駆使するハイテク部隊がローテクの部隊を翻弄する戦闘なのである。場面によっては一方的な「虐殺」に見えてしまうことがある。これは、いわば非対称の戦争なのである。もちろんエンタティンメント小説なので、そんな読み方をするのは間違っているかもしれない。ここ数年で自分の中に起きた変化が原因なのかもしれないと思った。