アラン・ワイズマン「人類が消えた世界」

ある日、突然人類が地球上から姿を消したら世界はどうなっていくだろう。例えばニューヨーク、マンハッタンでは、莫大な地下水を汲み出す排水機能が止まり、地下鉄は水没する。数年後、水道、ガス管などが破裂し、あちこちの道路に亀裂ができて、そこから植物が生えてくる。5年後ぐらいから建物の崩壊が始まる。500年後、街はブナやオークの森に覆われ、コヨーテ、ヘラジカハヤブサが帰ってくる…。「もし〜が〜だったら」という思考実験やシミュレーション物だと思って読んでみた。昔、何かの書物で、「人類が滅んで200年経てば地球は自然に帰る」という説を読んだことがあり、漠然とそれを信じていた。しかし、この本を読むと「200年説」が明らかに間違っていたことがわかる。200年どころか1000年経っても、1万年経っても元に戻らない事もたくさんあるのだ。
というより、この本を読むと、いままで「人類が地球にしてきたこと」が、どれほど多岐にわたり、しかも深刻なものであったかがわかってくる。ヨーロッパには、すでに太古の森はほぼ失われ、現在も残る「自然」には人類の痕跡が鮮明に残されていること。かつて北米大陸には、体長8m、体重6トンに達するオオナマケモノ、、クマ、ライオン等、多種多様な巨大ほ乳類が棲息していたが、人類がアジアから北米に移動してきたタイミングで絶滅してしまったこと。現在まで生産されたプラスチックのほとんどが今後何十万年も消滅しないこと…。放射性物質は幾世代にもわたって影響を与え続けること。

本書を読み終えた時、同じような「読後感」を与える本が他にもあることに気づいた。千松信也「ぼくは猟師になった」フランクシェッツィング「深海のYrr」ローワン・ジェイコブセン「ハチはなぜ大量死したか」石川拓治「奇跡のリンゴ」…。これらの本に共通するのは何だろう。近いうちにその考察を行ってみたい。