加藤典洋「村上春樹イエローページ1/2/3」

同じ著者による「村上春樹はむずかしい」を読んで、さらに、初期の村上作品を再読してみて、色々と考えさせられるところがあった。そこで「村上春樹はむずかしい」の前身とも言える本書も読んでみることにした。幻冬社から文庫で出ているが、1、2は絶版。3…

高城剛「空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は世界を制す」

読んで、かなりショックを受けた。これまで著者の本を何冊読んできたことだろう。怪しいという人もいるが、新しいトレンドを嗅ぎ分ける嗅覚の鋭さと、自身のライフスタイルすらガラリと変化させてサバイバルしていく柔軟性には、いつも驚かされる。著者は、2…

ミシェル・ウエルベック「服従」

これも原さんから。フランスにイスラム政権が誕生するという架空の近未来を描いた小説。日本の読者の間でもかなり話題になっている。読んでみてとても面白かったのだけれど、僕の知見では、要約や批評的な文章は到底無理。フランスにイスラム政権が成立する…

第36回篠山ABCマラソン・ギリギリ完走記

ゴールの関門閉鎖まであと3分! 篠山城の堀端の道から左へ折れるとゴールまで200mほど。コース脇の観客が「あと3分や!」と叫ぶ。動かない足を無理やり動かして、ペースを上げる。ようやく、やっと、ゴール!タイムは5時間7分55秒。未登録男子完走者5325人…

牧村泉「梅ケ谷ゴミ屋敷の憂鬱」

友人の寺久保さんのおすすめ。著者は、コピーライターから作家に転身、2002年、「邪光」で第3回ホラー&サスペンス大賞を受賞。寺久保さんが開いた集まりで会ったことがあるかないか…。「邪光」は読んだ。主人公の女性の心理描写が巧みで、平凡な主婦がじわ…

加藤典洋「村上春樹は、むずかしい」

友人である原さんのおすすめ。デビュー作「風の歌を聴け」から「女のいない男たち」まで、村上春樹の作家活動の全容を新書250ページ余りで一気に語りつくす。著者は村上春樹の作家活動を「初期」(1972〜82)、「前期」1982〜87)、「中期」(1987〜99)、「後期…

P・W・シンガー&オーガスト・コール「中国軍を駆逐せよ!ゴースト・フリート出撃す」

最近、軍事関係のエントリーが多いかなあ…。実際には、読む本全体の1/10にもならないと思うが、最近のエントリーだけを読むと誤解されるかもしれない。潜水艦モノ、海戦モノ、ハイテク軍事スリラーはもともと好きなジャンルだけど、本書も、その類である。…

T・マーク・マッカリー中佐&ケヴィン・マウラー「ハンター・キラー アメリカ空軍・遠隔操縦航空機パイロットの証言」

本書は無人機のひとつである「プレデター」のパイロットが書いた本である。数年前、フランスのパロット社の「ARドローン」を買って飛ばしてみて、物凄く大きな可能性を感じたことを覚えている。「無人機:ドローン」は、世の中に大きな変化を引き起こすイノ…

佐伯啓思「さらば、資本主義」

本書を読むきっかけになったのは、以前のエントリーでも紹介したNHKスペシャル「新・映像の世紀 第2集 グレートファミリー 新たなる支配者」。その中で紹介されたケインズの言葉。以下引用。 「今、 我々がそのただ中にいるグローバルで、かつ個人主義的な…

「STAR WARS/ジェダイの覚醒」

時間を忘れて楽しんだ。しかし。 遅ればせながら「STAR WARS/ジェダイの覚醒」2D字幕版を鑑賞。2時間を超える長さを感じることなく、退屈せずに最後まで楽しめた。一緒に観た友人も「面白かった」という感想。ミレニアム・ファルコン号、ハン・ソロが登場…

数多久遠(あまたくおん)「黎明の笛」kindle版

前回エントリーの「深淵の覇者」の著者のデビュー作。著者は航空自衛隊の元幹部自衛官。本書に先立って2008年に軍事シミュレーション小説「日本海クライシス2012」をネットで発表。その後、本書の原型となった「黎明の笛 KDP版」を個人出版。それが出版社の…

数多久遠「深淵の覇者」

大好きな海戦&潜水艦モノ。 舞台は、尖閣諸島付近や沖縄トラフなど東シナ海。著者は航空自衛隊の元幹部自衛官。帯に「これはただのフィクションではない。警告の書だ!」とあるが、「尖閣諸島をめぐる日中の紛争」という点では、設定にリアリティが足りず、…

沢木耕太郎「キャパの十字架」

いやあ面白かった。400ページ近いボリュームにも関わらず、一晩で読了。本書の内容は、2013年にNHKの番組で放送されたものと同じだと思うが、残念ながら見逃している。文庫になって購入したが、この内容なら単行本で買ってもよかった。 写真「崩れ落ちる兵士…

宮本喜一「ロマンとソロバン-----マツダの技術と経営、その快走の秘密---」

11/19のエントリーでマツダの広告について書いたが、 マツダの「Be a driver.」キャンペーンに感じたこと。 - 読書日記 マツダに何が起きているのか、俄然、興味が湧いてきた。企業が外部から見えるほど変化している時、その内部では驚くほど大きな変化が進…

かわぐちかいじ「空母いぶき1/2」

「これはもう空母じゃないか」 海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」が就役した時、「おいおい、これは空母そのものではないか」と思った。ヘリコプター搭載空母というのだろうが、ちょっと改造すれば戦闘機を搭載できるのではないかと思った。本書…

NHKスペシャル新・映像の世紀「02 グレートファミリー新たな支配者」

NHKスペシャル 新・映像の世紀「02 グレートファミリー新たな支配者」。録画しておいたのをようやく視聴。「01 百年の悲劇はここから始まった」もよかったが、今回も見応えがあった。20世紀に入って急速に台頭してきた大富豪たちに焦点を当てて資本主義の爆…

鎌田浩毅「西日本大震災に備えよ  日本列島大変動の時代」

異色の火山学者。 著者は、このところ頻発する火山噴火のせいか、時々テレビで見る火山学の先生。最初に見た時は、赤い革ジャンとスキンヘッドという異色の風貌が印象に残った。いつも読む地震学の研究者とは違う視点を期待して購入。タイトルの「西日本大震…

マツダの「Be a driver.」キャンペーンに感じたこと。

気持ちはわかるけど、伝わらないだろうなあ。 前回のエントリーで、キャッチフレーズを覚えている広告としてRIZAPの「結果にコミットする」と日産の「やっちゃえ」を紹介したが、個人的に一番印象に残っているのはマツダの「Be a driver.」キャンペーンであ…

最近、キャッチフレーズを覚えている広告って、ある?

少し前に、コピーライターが集まって飲んでいる時に、誰かが「最近の広告で、キャッチフレーズを覚えている作品ってあるかな?」と言い出した。その場にいた全員が思い出そうとするのだけれど、なかなか出てこない。ようやく出てきたのがライザップの「結果…

千松信也「けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然」 

2009年のエントリーで取り上げた「ぼくは猟師になった」の著者の2冊目。大学を出て猟師になった著者は、40歳になった。結婚して、子供もいるが、猟師としての生活はいまも続けている。11月から2月の猟期には、ワナをしかけて、イノシシ、シカを獲る。網猟で…

村上春樹「辺境・近境 ノモンハンの鉄の墓場」

ノモンハン事件の3冊目は、村上春樹の紀行エッセイの中の一章。再読である。本書を選んだのは、僕らの世代に近い人が、ノモンハン事件に触れ、さらにあの戦場の現在を訪れて、何に、どう感じたか、ということを知りたかったからである。 「ねじまき鳥クロニ…

伊藤桂一「静かなノモンハン」

「ノモンハンの夏」とは対照的に、兵士の一人一人に寄り添うように書かれたノモンハンである。著者自身が中国北部で4年9ヶ月の軍務に就いている。小説家で詩人。本書で1984年、芸術選奨文部大臣賞、吉川英治文学賞を受賞している。もう新刊では買えず、ama…

半藤一利「ノモンハンの夏」

「ノモンハン? モンハン? ゲーム?」 ひと月ほど前にテレビを見ていて、椅子から転げ落ちそうになった。朝の報道番組で、若者に太平洋戦争や占領時代のことを知っているかをたずねる企画で、確か若い女性だと思うが、「マッカーサー? え? マッカートニー…

アンディ・ウィアー「火星の人」

面白いとは聞いていたけれど、600ページ近いボリュームと火星有人探査という平凡なテーマのせいで敬遠していた。2016年2月公開のリドリー・スコット監督「オデッセイ」の原作、ようやく購入。2日強でいっき読み。いや文句なしに面白かった。 古くて新しい…

村上春樹「職業としての小説家」

これはメイキング・オブ・ハルキワールドである。 あまりチャーミングとは言えない素っ気ないタイトル。思うところあって、即、購入。村上春樹は、デビュー以来、ずっと継続して読んできた。しかし、90年台半ばまでは、かなり批判的に読んできたと思う。その…

半藤一利「昭和史1945-1987戦後編」Kindle版

8月15日。 友人のHさんが前作「昭和史1926-1945」の読みやすさを「見てきたように語るから」と紹介しているが、まったくその通り。本書でも、著者自身の体験も交えながら、半藤節といってもいい軽妙な語り口で、読者を、あの時代にスルスルと引っ張っていく…

半藤一利「昭和史1926-1945」Kindle版

恥ずかしながら今さらの「昭和史」。 この齢になって、初めて昭和史を読んでみようと思った。理由は、最近、戦後史に関する本を色々読み始めて、自分が「あの戦争」と「あの時代」に関してほとんど何も知らないという事実をいまになって痛感していること。ま…

陽水のカバーでユーミンの曲を再発見。

友人に借りた井上陽水の「UNITED COVER 2」を聴いていて、4曲めの「リフレインが叫んでる」がとてもよかったので、誰の曲だろうと調べてみたら、なんとユーミン。イントロや冒頭の歌詞は覚えていたが、ユーミンの曲だと思っていなかった。彼女のアルバムは…

半藤一利「日本のいちばん長い日」2本の映画とともに。

最初に1967年公開の岡本喜八監督作品をテレビで観た。次に2015年公開の原田眞人監督作品を映画館で観た。最後に原作を読んだ。 岡本喜八監督作品「日本のいちばん長い日」 戦後70年という、この夏、昭和史」を読んでみようと思った。テキストに選んだのは、…

ウィリアム・ホープ・ホジスン「幽霊海賊」

翻訳を待ち望んで、30年以上。 個人的に30年以上翻訳を待ち望んでいた作品。百年以上前の古い作品だし、人に勧めるような本ではないが、とても嬉しかったので、感想を書くことにする。ホジスンの名を知る人は少ないと思う。1963年、東宝で「マタンゴ」という…