歴史
江戸末期に活躍した播磨高砂の英雄、工楽松右衛門の生涯を描いた小説。著者は兵庫県出身の小説家。初めて読む人だ。 もう随分前になるが、友人で建築家のY君に誘われ、高砂市のイベントに出かけたことがあった。Y君はその当時「兵庫ヘリテージ」といって、県…
2015年、京都国立博物館で開かれた「琳派展」において、宗達、光琳、抱一の「風神雷神図」が一堂に会した。宗達の「風神雷神図」は、他の2点とは「次元が違ってる」と感じた。作品が放射しているオーラが桁違いに強い。日本画の絵師の中で、俵屋宗達と伊藤…
尊敬する友人、POPでロジカルでパワフルな頭脳の原さんのおすすめ。経済の本は、読み始めても途中で挫折することがほとんどだが、この本は、ほぼいっき読み。いやー、面白かった。なんか魔法みたいだ。概要をここに要約して、ちゃんと解説したいところだが、…
このところ仕事の資料で洋菓子とパンの本ばかり読んでいるが、その中で出会った出色の一冊。昨今のパンブームを取り上げたグルメ本の類だと思って読み始めたが、本書に描かれているのは、パンの歴史だけではない。パンを含む食文化はもちろんのこと、生活、…
日本会議というの組織のことを知り、その活動の実態が明らかになって来ると、強い悔恨の気持ちにとらわれてしまう。70年代以来、僕らが政治に興味を失い、背を向けるようになってしまったこと。そして、その後、僕らが大量生産大量消費、経済至上主義にどっ…
「アースダイバー」の頃。 10年以上前、東京港区に3年ほど住んでいたが、坂が多いのに閉口したことを覚えている。特に2年目に引っ越した南麻布のマンションは、崖のすぐ側に建っていて1階と3階に入口があるヘンな構造だった。1階と3階では、外に出た周…
本書を読むきっかけになったのは、以前のエントリーでも紹介したNHKスペシャル「新・映像の世紀 第2集 グレートファミリー 新たなる支配者」。その中で紹介されたケインズの言葉。以下引用。 「今、 我々がそのただ中にいるグローバルで、かつ個人主義的な…
NHKスペシャル 新・映像の世紀「02 グレートファミリー新たな支配者」。録画しておいたのをようやく視聴。「01 百年の悲劇はここから始まった」もよかったが、今回も見応えがあった。20世紀に入って急速に台頭してきた大富豪たちに焦点を当てて資本主義の爆…
「ノモンハン? モンハン? ゲーム?」 ひと月ほど前にテレビを見ていて、椅子から転げ落ちそうになった。朝の報道番組で、若者に太平洋戦争や占領時代のことを知っているかをたずねる企画で、確か若い女性だと思うが、「マッカーサー? え? マッカートニー…
恥ずかしながら今さらの「昭和史」。 この齢になって、初めて昭和史を読んでみようと思った。理由は、最近、戦後史に関する本を色々読み始めて、自分が「あの戦争」と「あの時代」に関してほとんど何も知らないという事実をいまになって痛感していること。ま…
先日、内田先生が語るシンポジウムを聞いて、ますます冴えわたる直感ブッ飛びロジックにゲラゲラ笑ってしまった。中に出てきた京都東山の鳥辺野、長崎の隠れキリシタンの話が面白かった。シンポジウム後の質問時間で聴衆の一人から徳島県にノアの方舟が流れ…
現在の日本は、明治維新が生み出した。 白井聡著「永続敗戦論」では、原発事故で露呈した現在の日本の劣化が、戦後の「敗戦への向き合い方に端を発している」という考察を知った。その白井聡と内田樹の対談「日本戦後史論」では、内田が、日本政府のTPPへの…
Hさんが紹介していた本。最初に本書を読んでしまったので、中で何度も言及されている「永続敗戦論」のところでわからない部分があった。そこで「永続敗戦論」を読み、本書をもう一度読んでみた。本書の中での白井聡の主張は「永続敗戦論」とほぼ同じ。いっぽ…
知人のHさんがFBで紹介していた、内田樹と本書の著者である白井聡の対談集「日本戦後史論」を読んだ。その中で、内田樹の発言がこれまでになく過激で、色々考えさせられたが、対談の中で何度も出てくるのが本書である。(というよりも、その対談自体が、本書…
激動の幕末。2年前に吉田松陰処刑。前年には桜田門外で井伊大老暗殺。そして公武合体で皇女和宮が江戸へ下った文久元年。江戸から20里ほど離れた忍藩(おしはん)という小藩に、尾崎石城という下級武士が暮らしていた。彼は文章が巧みで、しかも絵がうまか…
タイトルがとてもいい。コンセプトが明快に見える。著者は1994年「石の来歴」で芥川賞を受賞している。2年ほど前に著者による「神器―軍艦「橿原」殺人事件」を読んだ。「神器」は、ミステリーと思って読み始めたが、内容はかなりぶっ飛んでいた。太平洋戦争…
2011年のベルリンの一画で、一人の男が目を覚ます。彼はガソリン臭い軍服を着ている。彼の名はアドルフ・ヒトラー。1945年、陥落直前のベルリンからたった一人で現代にタイムスリップしてきた。側近も、親衛隊も、軍隊もいない彼は、街をさまよう内に親切な…
「鏡餅」の由来を知っているだろうか? 一説には、穀物神である年神(歳神)へのお供えであり、三種の神器である、八咫鏡(やたのかがみ)を形どったと言われるが、明らかではない。 本書によると、大小の餅を重ねた、あの形は「トグロを巻いた蛇」を現して…
古代史本をもう一冊。 前回エントリーの村井康彦「出雲と大和」と前後して読んだ。「出雲と大和」は歴史学者による古代史幻想紀行ともいえる本だったが、偶然、本書も、歴史の舞台を訪ね歩く古代史紀行のような構成となっている。著者は古代史には、まったく…
日本という国の始まりに、大きな謎がある。古代史の本を読む楽しさは、この謎を解明する楽しさである。邪馬台国の謎、卑弥呼の謎、出雲神話の謎…。古代史の研究者のみでなく様々な人々がこの謎に挑戦してきた。作家、哲学者、多くのアマチュア研究者たち…。…
ナマの中沢新一の話を聞くのは2度目。前回は内田樹や釈徹宗とのシンポジウムだったので単独の講座は初めて。教室は満員。話は東京の「アースダイバー」から。「アースダイバーとは何か?」というところから語り始めるので本を読んでいる人間には最初は少々か…
ジェノサイド、ホロコースト、民族浄化…、いわゆる「大虐殺」は、十数年前から自分の読書の重要なテーマであり続けている。本書は、カンボジアで200万人を死亡させたとされるポル・ポト派の最高幹部たちに直接インタビューを試みた本である。これまでポル・…
「空白の5マイル」「雪男は向こうからやってきた」に続く3作目。今度は北極が舞台だ。探検の歴史と自らの探検紀行を同時進行で語っていくという手法はすっかり定着したようだ。どちらか一方だけだとたぶん退屈してしまう探検読み物が、この手法なら最後ま…
知人からのおすすめ。「大阪アースダイバー」を読んで、にわかに大阪の町や歴史への興味がわいてきて、本書と井上理津子「最後の色街 飛田」を購入。本書は市民講座「ナカノシマ大学」の講義の書籍化である。著者は、宗教学者の釈徹宗と歴史学者の高島幸次。…
2005年に出版された「アースダイバー」はとても面白い本だった。 縄文時代の地図を頼りに現代の東京を探検するというアイデアは秀逸で、東京勤務時代、単身の退屈な休日に、この本を鞄に入れて、自転車であちこち走りまわった記憶がある。その「大阪版」…
時代小説は好きなジャンルだが、藤沢周平を読み尽くした後は、他の作家を読んでもあまり面白くないと思ってしまう。ストーリーがご都合主義で人物描写が浅い。しかも設定などが藤沢作品の二番一煎じに思えてしまう。だから時代小説が読みたくなると、藤沢作…
こんな面白い本が2年以上も前に出版されていて知らなかったとは…。まず著者の経歴が面白い。本能寺の変、山崎の合戦の後、秀吉の残党狩りを生き延びた光秀の子、於寉丸(おづるまる)の子孫であり、情報システム会社の役員を務める、理工系の方である。著者…
近江に「ヘソ」「マガリ」という地名がある。 滋賀県の野洲川近くに「ヘソ」という地名と「マガリ」という地名が隣り合わせに位置する場所がある。上りの新幹線で京都駅を出て、トンネルを抜け、瀬田の鉄橋を渡ってしばらく走ったところにある。自由の女神の…
司馬遼太郎記念館 1996年に開館して以来、行かなければと思っている内に15年も経ってしまった。自分が読んだ作家の中で一番多いのが司馬遼太郎で、軽く100冊は超えている。家人が見つけてきた地元の旅行会社「銀のステッキ」が企画した日帰りツアーで、初…
書店に行くと必ず古代史のコーナーをチェックするが、本書もそこで発見した一冊。高城修三という著者の名前を覚えていた。著者の紹介に1977年「榧の木祭り」で芥川賞を受賞とあった。その作品を読んだことはないが、誰かの書評で「民俗学な手法や知識を用い…