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村上春樹「騎士団長殺し」

バレンタイデーみたいな書店の店頭イベント。 新作の発売で、こんなに盛り上がるのは、この人ぐらいじゃないか。あとは「ハリーポッター」のシリーズ。芥川賞でも、本屋大賞でも、これほど盛り上がらないと思う。平積みどころか、壁積みというのか、店頭に面…

鳥居「キリンの子 鳥居歌集」

詩歌の本はほとんど読まないが、知人から本書を教えられて、即購入。著者のプロフィールが凄まじい。2歳の時に両親が離婚。目の前で母が自殺。児童養護施設に入るが虐待を受ける。小学校中退、ホームレスにもなった。拾った新聞で文字を覚え、短歌を作りは…

加藤典洋「村上春樹イエローページ1/2/3」

同じ著者による「村上春樹はむずかしい」を読んで、さらに、初期の村上作品を再読してみて、色々と考えさせられるところがあった。そこで「村上春樹はむずかしい」の前身とも言える本書も読んでみることにした。幻冬社から文庫で出ているが、1、2は絶版。3…

ミシェル・ウエルベック「服従」

これも原さんから。フランスにイスラム政権が誕生するという架空の近未来を描いた小説。日本の読者の間でもかなり話題になっている。読んでみてとても面白かったのだけれど、僕の知見では、要約や批評的な文章は到底無理。フランスにイスラム政権が成立する…

加藤典洋「村上春樹は、むずかしい」

友人である原さんのおすすめ。デビュー作「風の歌を聴け」から「女のいない男たち」まで、村上春樹の作家活動の全容を新書250ページ余りで一気に語りつくす。著者は村上春樹の作家活動を「初期」(1972〜82)、「前期」1982〜87)、「中期」(1987〜99)、「後期…

伊藤桂一「静かなノモンハン」

「ノモンハンの夏」とは対照的に、兵士の一人一人に寄り添うように書かれたノモンハンである。著者自身が中国北部で4年9ヶ月の軍務に就いている。小説家で詩人。本書で1984年、芸術選奨文部大臣賞、吉川英治文学賞を受賞している。もう新刊では買えず、ama…

村上春樹「職業としての小説家」

これはメイキング・オブ・ハルキワールドである。 あまりチャーミングとは言えない素っ気ないタイトル。思うところあって、即、購入。村上春樹は、デビュー以来、ずっと継続して読んできた。しかし、90年台半ばまでは、かなり批判的に読んできたと思う。その…

村上龍「オールド・テロリスト」

著者の作品を読むのは、2005年の「半島を出よ」以来。80年代、90年代、二人の「ムラカミ」の作品を並行して読んでいた。その頃は、どちらかというとリュウのほうに共感していたと思う。しかし、今世紀に入った頃からは、ハルキばかり読むようになってきた。…

稲葉真弓「少し湿った場所」

前回のエントリーで書いた著書「海松」「半島へ」の著者によるエッセイ集。2014年8月30日に膵臓癌で逝去。巻末のあとがきの日付が8月吉日となっている。あとがきの文章が、病床で書かれたのだろうか、ちょっと不思議な文章で、胸をつかれる。エッセイの内…

稲葉真弓「海松」「半島へ」

今年8月、本書の著者が亡くなっていた。享年64歳、すい臓がんだった。その事をつい最近まで知らずにいた。たまたま書店で見つけた著者のエッセイ集「少し湿った場所」を手にとって帯の文章を読んで初めて知った。 数年前に著者の短篇集「海松」を初めて読ん…

奥泉光「東京自叙伝」

タイトルがとてもいい。コンセプトが明快に見える。著者は1994年「石の来歴」で芥川賞を受賞している。2年ほど前に著者による「神器―軍艦「橿原」殺人事件」を読んだ。「神器」は、ミステリーと思って読み始めたが、内容はかなりぶっ飛んでいた。太平洋戦争…

新庄耕「狭小住宅」

前回のエントリーのきっかけになったHさんのFBの投稿の中で触れられていた本書、読んでみることにした。話はシンプルだ。Hさんによると「不動産販売の営業マンになった若者の、売れない苦闘と、売れるようになった後の精神的退廃の物語」。主人公は入社から…

Hサんの返信への返信 村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」

Hさんという人がFacebookに村上春樹の新作への感想を書いていたので、コメントを付けたら、彼のブログに長い返信が書かれてびっくり。http://water-planet-bungaku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-16 その内容は彼のブログを読んでもらうことにして、その返信へ…

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

いわくありげなタイトルと発売日のみの発表で、ここまで話題になるのだから凄い。店頭に大量に置かれた本書をレジに持っていくのは、少し恥ずかしい。本を買うのに、こんな気持ちを体験するのは珍しい。村上春樹の作品。かつては時代のトレンドをチェックす…

和合亮一「詩の礫」

たぶん40年ぶりぐらいに詩集を買った。NHK BS「週刊ブックレビュー」のおすすめ本。著者は詩人。福島で生まれ、福島に住んでいる。震災の直後からTwitterでつぶやき始める。つぶやいた直後、全国から171人のフォローがあった。翌朝には550人、3日目の朝には…

古川 日出男「馬たちよ、それでも光は無垢で」

友人に借りた本。友人は本書を読み始めたが「すごくしんどい。先に読んで」という。読んでみた。なるほど…。詩を思わせる、美しい、不思議なタイトルに惹かれる。著者の作品を初めて読んだが、一言で言うと、言葉のコードが違うという感じ。だから読みにくい…

池澤夏樹「春を恨んだりしないーー震災をめぐって考えたこと」

120頁ほどの薄い本。小説家が震災や原発について書いた本が読みたいと思った。報道の言葉ではなく、ジャーナリストの言葉でもなく、小説家の言葉で、今度の震災を語って欲しかった。被災地の光景や空気、匂い、音、人々を描写してほしかった。著者は詩人で、…

須賀敦子の「やーね」

先週末、朝日カルチャー講座で湯川豊氏の「須賀敦子を読む」という講座を聴講。2月23日の日記でこの著書を取り上げたのも、この講座の予習を兼ねた再読だった。しかし結果は、かなり失望。講座で著者が語ったことは、すべて著書の中に書かれていたことで…

デイビッド・ベイショー「追跡する数学者」

主人公である天才数学者の、かつての恋人アーマが、突然失踪してしまう。作家であり、本の装丁家であった彼女は数学者に351冊の本を寄贈して行方をくらます。数学者は、残された本を手がかりに恋人の行方を探しはじめる。ミステリと思って読むと、がっか…

古井由吉「杳子・妻隠」再読

たぶん30年ぶりぐらいの再読。単行本で持っていたはずだが見つからず、本棚から新潮文庫で2冊発見。ふだん同じ本を再読することはほとんどないが、この作品だけは例外中の例外で、少なくとも数回は読んでいる。基本は恋愛小説だ。主人公は大学生。単独登…

古井由吉「やすらい花」

20代の頃、最も傾倒した作家の一人だった。自分の生涯の読書歴の中で作家の番付表を作るとすれば、間違いなく大関以上、ひょっとしたら横綱の位置に来る人かもしれない。「内向の世代」と呼ばれた作家群の中心的存在。おそろしいほど緻密な、それでいてし…

雑誌 考える人「村上春樹ロングインタビュー」

とてもよいインタビューだったので書いておこう。高原のホテルに2泊3日で滞在しながらのインタビュー。ボリュームがたっぷりで、読み終えるのにゆうに3時間はかかった。村上春樹自身が語る言葉をこんなに長く読んだのは初めての体験。彼の作品について、…

1Q84の読み方 その2 BOOK3を読んで。

1Q84 BOOK3をもう少し考えてみる。 村上春樹の作品は9割ぐらいは読んでいる。しかし、ファンというわけではない。どちらかというとトレンドウォッチングの一環という感じで、出る度に真っ先に買って読んできた。どこか翻訳小説を読んでいるような文体と、日…

村上春樹「1Q84 BOOK3」

サクサク読めた。とってもスムーズ。ちょっと肩すかしだな。というのが正直な感想。ほんとうは、新興宗教「さきがけ」のことをもっと描いてほしかったのだ。BOOK1、BOOK2以上に登場人物の数が少なくなり、基本は天吾、青豆、牛河の3名によって話が進んで…

小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」

理数系の頭を持っていない自分には、数学やチェスのようなゲームの世界に強い憧れがある。「フェルマーの最終定理」や「ポアンカレ予想」に取り組んだ数学者たちのドキュメンタリーを読んだりするのが好きなのは、そんな理由からだと思う。 「博士の愛した数…

高村薫「太陽を曳く馬」

2009年7月に購入して以来、いまだに読了できずにいる難攻不落小説。村上春樹の「1Q84」とセットで読むつもりで買ったのだが、文体との相性が悪いのか、なかなか読み進めないでいる。なぜ「1Q84」とセットかというと、どちらも新興宗教を題材としてお…

「1Q84」の読み方

「1Q84」の読み方 この小説で自分がいちばん注目しているのは「悪」の描き方だ。「悪」はどこからどうやって生まれてくるのか、それは、この小説の最も重要なテーマのひとつだと思っている。1995年、地下鉄サリン事件が起きた。村上春樹は、1997年、その被…