小説

P・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」再読。映画「ブレードランナー2049」を観る前に。

「ブレードランナー2049」を観る前に。40年ぶりの再読。

柳広司「風神雷神」

2015年、京都国立博物館で開かれた「琳派展」において、宗達、光琳、抱一の「風神雷神図」が一堂に会した。宗達の「風神雷神図」は、他の2点とは「次元が違ってる」と感じた。作品が放射しているオーラが桁違いに強い。日本画の絵師の中で、俵屋宗達と伊藤…

柞刈湯葉「横浜駅SF」

「横浜駅」が暴走、自己増殖して日本を覆い尽くす。 映画「ターミネーター」で人類に反乱を起こす人工知能の名は「スカイネット」。本書では「横浜駅」と「スイカネット」が暴走を起こして、日本全土を支配しようとする。昨年末に出版された直後、書店で手に…

川上未映子・村上春樹「みみずくは黄昏に飛びたつ」

こんなすごいインタビュー、読んだことがない。 「騎士団長殺し」を読んだ人なら絶対おすすめ!インタビュアーの川上未映子は、十代から村上作品の熱心な読者で、彼の小説はもちろん、エッセイやインタビューなどまで全部読んでいて、しかも、そのディテール…

数多久遠「半島へ 陸自山岳連隊」

この時機に、あまりにタイミングが良すぎる!?出版。 実兄の暗殺、粛清される高官たち、ミサイル発射、核実験など、エスカレートする挑発行為…。迫る北の崩壊。その時、韓国、米国、中国はどう動くのだろう。そして日本は、自衛隊はどう対応するのだろう…。…

桐野夏生「夜の谷を行く」

著者の作品で読んだのは「魂萌え」「グロテスク」ぐらいだが、テレビドラマや映画になった作品は気になってけっこう見ている。著者は実際に起きた事件をモチーフにして作品を書くことがあるが、本書も連合赤軍の事件がモチーフになっている。事件は僕が高校…

村上春樹「騎士団長殺し」

サクサク・ストーリー。 これまででいちばんサクサク読めた。途中でひっかかったり、退屈したり、考え込んだりすることなく、ほんとうに、サクサク、サクサクとストーリーが進んでいき、2冊合わせて1000ページにもなる大作をいっきに読ませてしまう。元々ス…

塩田武士「罪の声」

あの声の主 本書は1984年から1985年にかけて起きた「グリコ・森永事件」を題材にした小説。この事件を題材にした作品では高村薫の「レディ・ジョーカー」がある。本書の舞台は、事件から31年経った「現在の関西」だ。なぜ「現在」なのか?その理由は、主人公…

池井戸潤「陸王」

著者の作品を初めて読んだ。「下町ロケット」は面白そうだったが、ベストセラーになり、映画やドラマになってしまうと、天邪鬼の虫が動いて敬遠していた。まずタイトルの「陸王」が目に飛び込んできた。今の人はほとんど誰も知らないと思うが、「陸王」は、…

ウィリアム・ホープ・ホジスン「グレンキャリグ号のボート」

個人的な趣味の本の話。翻訳されるのを、40年近く、待ちに待って、待って、待ちくたびれて、諦めてしまっていた作品。英国の怪奇小説作家ウィリアム・ホープ・ホジスン(1877〜1918)の、ボーダーランド三部作と呼ばれる長編シリーズのひとつ。ナイトランド叢…

加藤典洋「村上春樹イエローページ1/2/3」

同じ著者による「村上春樹はむずかしい」を読んで、さらに、初期の村上作品を再読してみて、色々と考えさせられるところがあった。そこで「村上春樹はむずかしい」の前身とも言える本書も読んでみることにした。幻冬社から文庫で出ているが、1、2は絶版。3…

ミシェル・ウエルベック「服従」

これも原さんから。フランスにイスラム政権が誕生するという架空の近未来を描いた小説。日本の読者の間でもかなり話題になっている。読んでみてとても面白かったのだけれど、僕の知見では、要約や批評的な文章は到底無理。フランスにイスラム政権が成立する…

牧村泉「梅ケ谷ゴミ屋敷の憂鬱」

友人の寺久保さんのおすすめ。著者は、コピーライターから作家に転身、2002年、「邪光」で第3回ホラー&サスペンス大賞を受賞。寺久保さんが開いた集まりで会ったことがあるかないか…。「邪光」は読んだ。主人公の女性の心理描写が巧みで、平凡な主婦がじわ…

加藤典洋「村上春樹は、むずかしい」

友人である原さんのおすすめ。デビュー作「風の歌を聴け」から「女のいない男たち」まで、村上春樹の作家活動の全容を新書250ページ余りで一気に語りつくす。著者は村上春樹の作家活動を「初期」(1972〜82)、「前期」1982〜87)、「中期」(1987〜99)、「後期…

P・W・シンガー&オーガスト・コール「中国軍を駆逐せよ!ゴースト・フリート出撃す」

最近、軍事関係のエントリーが多いかなあ…。実際には、読む本全体の1/10にもならないと思うが、最近のエントリーだけを読むと誤解されるかもしれない。潜水艦モノ、海戦モノ、ハイテク軍事スリラーはもともと好きなジャンルだけど、本書も、その類である。…

数多久遠(あまたくおん)「黎明の笛」kindle版

前回エントリーの「深淵の覇者」の著者のデビュー作。著者は航空自衛隊の元幹部自衛官。本書に先立って2008年に軍事シミュレーション小説「日本海クライシス2012」をネットで発表。その後、本書の原型となった「黎明の笛 KDP版」を個人出版。それが出版社の…

数多久遠「深淵の覇者」

大好きな海戦&潜水艦モノ。 舞台は、尖閣諸島付近や沖縄トラフなど東シナ海。著者は航空自衛隊の元幹部自衛官。帯に「これはただのフィクションではない。警告の書だ!」とあるが、「尖閣諸島をめぐる日中の紛争」という点では、設定にリアリティが足りず、…

伊藤桂一「静かなノモンハン」

「ノモンハンの夏」とは対照的に、兵士の一人一人に寄り添うように書かれたノモンハンである。著者自身が中国北部で4年9ヶ月の軍務に就いている。小説家で詩人。本書で1984年、芸術選奨文部大臣賞、吉川英治文学賞を受賞している。もう新刊では買えず、ama…

アンディ・ウィアー「火星の人」

面白いとは聞いていたけれど、600ページ近いボリュームと火星有人探査という平凡なテーマのせいで敬遠していた。2016年2月公開のリドリー・スコット監督「オデッセイ」の原作、ようやく購入。2日強でいっき読み。いや文句なしに面白かった。 古くて新しい…

村上春樹「職業としての小説家」

これはメイキング・オブ・ハルキワールドである。 あまりチャーミングとは言えない素っ気ないタイトル。思うところあって、即、購入。村上春樹は、デビュー以来、ずっと継続して読んできた。しかし、90年台半ばまでは、かなり批判的に読んできたと思う。その…

ウィリアム・ホープ・ホジスン「幽霊海賊」

翻訳を待ち望んで、30年以上。 個人的に30年以上翻訳を待ち望んでいた作品。百年以上前の古い作品だし、人に勧めるような本ではないが、とても嬉しかったので、感想を書くことにする。ホジスンの名を知る人は少ないと思う。1963年、東宝で「マタンゴ」という…

村上龍「オールド・テロリスト」

著者の作品を読むのは、2005年の「半島を出よ」以来。80年代、90年代、二人の「ムラカミ」の作品を並行して読んでいた。その頃は、どちらかというとリュウのほうに共感していたと思う。しかし、今世紀に入った頃からは、ハルキばかり読むようになってきた。…

宮内悠介「ヨハネスブルグの天使たち」

このところ日本の新しいSF作家たちを読んでいる。囲碁や将棋など、ゲームを題材にしたSF短編集「盤上の夜」がなかなかよかったので、本書を購入。舞台は、前作とはガラリと変わって、近未来のリアルワールド。内戦により荒廃した近未来のヨハネスブルグ、9.1…

宮内悠介「盤上の夜」

まず、これSFなの?という疑問が。不思議な才能だ。囲碁、チェッカー、麻雀、チェスの原型となったチャトランガ、将棋…。全作品、ゲームが題材である。小川洋子の、チェスを題材にした小説「猫を抱いて象と泳ぐ」を思い出した。チェスの世界でしか生きられな…

スタニスワフ・レム「ソラリス」沼野充義 訳 再読

ほぼ40年ぶりの再読。 世界30数カ国語に翻訳されているという名作中の名作SF。レムは、僕が一番好きなSF作家である。ソ連のアンドレー・タルコフスキーと米国のスティーブン・ソダーバーグによって映画化され、どちらも劇場で観ている。タルコフスキー版では…

ジェフ・ヴァンダミア「全滅領域」「監視機構」「世界受容」

この著者の作品を初めて読んだ。久々にハマったSF。3部作である。「サザーン・リーチ・シリーズ」というらしい。1作目を読み始めた時点で、すでに3作とも出版済みだったので、1週間ほどでいっきに3作を読み終えた。印象は「懐かしさ」と「新しさ」。懐…

稲葉真弓「海松」「半島へ」

今年8月、本書の著者が亡くなっていた。享年64歳、すい臓がんだった。その事をつい最近まで知らずにいた。たまたま書店で見つけた著者のエッセイ集「少し湿った場所」を手にとって帯の文章を読んで初めて知った。 数年前に著者の短篇集「海松」を初めて読ん…

宮部みゆき「荒神」

2013年3月から2014年3月まで朝日新聞に連載していた新聞小説。毎日コマ切れに読まされる新聞小説は好きではないが、本書は連載中から気になっていて、発売と同時に購入。不思議なことに宮部みゆきの小説を読むのは本書が初めて。著者の作品が別に嫌いという…

奥泉光「東京自叙伝」

タイトルがとてもいい。コンセプトが明快に見える。著者は1994年「石の来歴」で芥川賞を受賞している。2年ほど前に著者による「神器―軍艦「橿原」殺人事件」を読んだ。「神器」は、ミステリーと思って読み始めたが、内容はかなりぶっ飛んでいた。太平洋戦争…

ティムール・ヴェルメシュ「帰ってきたヒトラー」

2011年のベルリンの一画で、一人の男が目を覚ます。彼はガソリン臭い軍服を着ている。彼の名はアドルフ・ヒトラー。1945年、陥落直前のベルリンからたった一人で現代にタイムスリップしてきた。側近も、親衛隊も、軍隊もいない彼は、街をさまよう内に親切な…