エッセイ

岸 政彦・柴崎友香「大阪」

NHKのEテレで「ネコメンタリー 猫も、杓子も」という番組があって、作家や学者が猫と暮らす日常を記録したドキュメンタリーだが、この番組を見て、本書の著者のひとりである岸政彦氏を初めて知った。番組の中で描かれた、著者が散歩する街の風景が、大阪の港…

村上春樹「猫を棄てる」

「小さな本」だ。 ハードカバーの新書サイズでページ数も100ページほど。台湾のイラストレーターによる叙情的な挿画ページもしっかりあるので、本文はさらに短い印象を受ける。1時間ほどでスルッと読めた。しかし、この「小さな本」の読後感は、長編小説を読…

千松信也「けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然」 

2009年のエントリーで取り上げた「ぼくは猟師になった」の著者の2冊目。大学を出て猟師になった著者は、40歳になった。結婚して、子供もいるが、猟師としての生活はいまも続けている。11月から2月の猟期には、ワナをしかけて、イノシシ、シカを獲る。網猟で…

村上春樹「辺境・近境 ノモンハンの鉄の墓場」

ノモンハン事件の3冊目は、村上春樹の紀行エッセイの中の一章。再読である。本書を選んだのは、僕らの世代に近い人が、ノモンハン事件に触れ、さらにあの戦場の現在を訪れて、何に、どう感じたか、ということを知りたかったからである。 「ねじまき鳥クロニ…

村上春樹「職業としての小説家」

これはメイキング・オブ・ハルキワールドである。 あまりチャーミングとは言えない素っ気ないタイトル。思うところあって、即、購入。村上春樹は、デビュー以来、ずっと継続して読んできた。しかし、90年台半ばまでは、かなり批判的に読んできたと思う。その…

稲葉真弓「少し湿った場所」

前回のエントリーで書いた著書「海松」「半島へ」の著者によるエッセイ集。2014年8月30日に膵臓癌で逝去。巻末のあとがきの日付が8月吉日となっている。あとがきの文章が、病床で書かれたのだろうか、ちょっと不思議な文章で、胸をつかれる。エッセイの内…

小田嶋隆「ポエムに万歳!」

ポエムの氾濫。 「ポエム」なるものが世の中にはびこっているという。著者によれば、世の中には、テレビから、新聞、ネットに至るまであらゆるメディアに「ポエム」が氾濫しているという。特にNHKなどのニュース番組で、女子アナが読み上げるニュースまでが…

鈴木敏夫「ジブリの哲学 〜変わるものと変わらないもの〜」

またまたジブリ関連。本書を読んで、鈴木敏夫という人物について、わかったと思ったことがある。彼は「プロデューサー」というよりは「編集者」ではないか」ということ。本書の中で面白いのは、宮崎駿について書いた文章。それ以外の文章は、ロジカルで明快…

川上和人「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」

あなたは、ふだん「恐竜」の本を買うだろうか?よく立ち寄る書店の新刊コーナーで、ある日、あなたは「恐竜」に関する新しい本を目にする。著者の名前は知らない。価格は1974円。その本を手に取ってレジに持っていくだろうか?僕は買わない。「恐竜」のこと…

池澤夏樹「春を恨んだりしないーー震災をめぐって考えたこと」

120頁ほどの薄い本。小説家が震災や原発について書いた本が読みたいと思った。報道の言葉ではなく、ジャーナリストの言葉でもなく、小説家の言葉で、今度の震災を語って欲しかった。被災地の光景や空気、匂い、音、人々を描写してほしかった。著者は詩人で、…

松岡正剛「多読術」

「松丸本舗」のエントリーでも書いたが、松岡正剛は、自分が20代の頃から読んでいる著者で、自宅の書棚を探せば十数冊は見つかると思う。「探せば」と書いたのは、書棚のあちこちに散らばっているからで、その理由は、著書のジャンルを特定できないからであ…

村上春樹「「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」

村上春樹作品の9割ぐらいは読んでいると思うが、ある時期までは好きで読むというより「好きではないが、すごく売れているみたいなので、トレンドウォッチングのつもりで読んでおく作家」だった。それが変わってきたのは、著者自身が地下鉄サリン事件の被害…

福岡伸一「ルリボシカミキリの青」

福岡先生の本は5冊目。 「生物と無生物のあいだ」以来、読み続けている。実は私は理数系の本が大好きなのである。小学校以来、数学はからきし駄目だったのだが、サイエンスに対する憧れだけは人一倍強かった。小学校の高学年からSFを読むようになったのも、…